2009年 05月 22日

追悼記事(12) 宇佐見徹也 さん

宇佐美 徹也(うさみ てつや ) さんが 5月17日に亡くなられた。
職業は、スポーツライターという肩書きになるが、
元パリーグの公式記録員だったこともある宇佐見さんは
特に日本のプロ野球に関して 「記録の神様」 と言われる。

いち早くセーブ記録に着目し、メジャーリーフ(MLB)を参考にしつつ
日本独自のセーブルールを考案し1974年に
プロ野球の公式記録に導入されるきっかけとなるなど、
実際のプロ野球への貢献も非常に大きい。

亡くなられて、その恩を改めて知るということは多いのだが、
宇佐見さんが亡くなられて初めて気がついた 「学恩」 のようななものがあり、
それを改めて感謝したい。

「学恩」 というと、本当はちょっと違うとも思うけれども、
「記録の神様」 の 記録 (データ、数字) の見方である。
10代の頃から宇佐美さんのご著作を拝読してきて、
有形無形の 「記録というものに学ぶ姿勢」 を教わってきた気がする。

説明が難しいことのなので、 「ある選手」 のことをひきあいに出して
そのことを書きたい。

日本のプロ野球で活躍した 「ある選手」 は、
王貞治選手の868本塁打であるとか、
張本勲選手の3085安打 (日米通算で最近、イチローが抜いた)
というような、突出した大記録はもっていないものの、
打率、打点、本塁打、安打数、得点などで歴代トップ10に
入る成績を残している。

この 「ある選手」 は、しかし、併殺打(ダブルプレーになった打球)の
数が最高クラスである。

この 「ある選手」 というのに、
落合(現中日ドラゴンズ監督)や野村(現楽天イーグルス監督)の
ような、足が速くないタイプの強打者を連想された方が多いと思う。
(もちろん、この記録だけなら彼らも当てはまる)

ところが この 「ある選手」 は、通算190盗塁をしており、
盗塁王争いも何度かしたことがあるほどの俊足の選手でもある。

これが何を意味づけるのか。

火が出るほどの弾丸ライナーを放つ強打者像を
宇佐見さんは記録を使った文章で浮き彫りにしてくれた。
そして記録と記憶がクロスオーバーする。

この 「ある選手」 は 長嶋茂雄である。

記録、データ、数字というものを通じて 「人間像」 というものを
掘り出すことに用益することを教えてくださった。

だから、私にとって それは 「学恩」 なのである。

最近、(これは自分への反省も踏まえなければならないが・・・)
人を見ずにパソコン画面のデータばかりを見る人が増えてきた。
だから、「データとは人間像を浮き彫りにするためにある」 
(ちょっと極端に言っています)
という自戒にもなる教えは実に 「学恩」 である。

ちなみに、拝読させていただいている 
スポーツライターの玉木正之さんのホームページの日記
宇佐見さんの葬儀の様子が書いてあった。

長嶋、王、野村など往年の大選手たちから贈られた花で遺影が飾られていたという。
ところが、宇佐見さんに大変にお世話になったはずのスポーツ雑誌の関係者の
姿がまったく見えないことに立腹されていた。

その雑誌の編集部員たちは 「忙しい忙しい」 と言いながら、
パソコンの画面でデータばかりを見ているのかもしれない。

マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2009-05-22 15:10 | 草評


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