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2009年 07月 18日

南無阿弥陀仏とアメイジング・グレイス(10) 試訳編(3) wretch

Amazing grace how sweet the sound
That saved a wretch like me.
I once was lost but now am found,
Was blind but now I see.

the sound を 福音 と訳したものに出会ったことがないなどと、
傲慢なことを書いたのだが、逆の方面から、たとえば『歎異抄』の
「悪人なおもて往生をとぐ」 の悪人を wretch と英訳した文章にも
出会ったことがない。



wretch は、つまらない言い方だが 「試験に出ない英単語」 である。
いったいどんな試験に出るというのだろうか? 
「賛美歌検定」 とかいうものがあったとしても、出てこない言葉だろう。

まずは手元にある大修館の 『ジーニアス英和辞典』を繙くと、

1 気の毒な人,とても不幸な人.
2 [しばしばおどけて;けなして]見下げ果てたやつ,悪党
  [愛情を込めて;おどけて]やつ, わんぱく小僧: You ~!
  こいつめ 《◆動物にも用いる》.

と記述がしてあり、これ(上記)がその記述のすべてである。

英英辞典の方は、私は繙いてもよくわからないことが多いのだが、
いちおう『Webster』も 『Longman』も久しぶりに引いてみたが、
ほぼ『ジーニアス』の通りだった。
私にとっては感覚的に、普通の英英辞書よりもたまにズバッと
その英単語についての閃きのようなものをくれることがある
クロスワードパズルを解くための辞書である
『Webster's official Crossword Puzzle Dictionary』 という分厚い辞書も
開いてみたものの、劇的な発見や連想をくれるものはなかった。

むしろ、『ジーニアス』を開くと、wretch という言葉の直前に
レッカー車でおなじみの 

wreck 難破,難破船,難破船の漂流物

という言葉があったということの方が大いに連想をふくらまされた。妄想かもしれないが。
私の 『ジーニアス』 には wreck に印がつけてあったので自然に目がいった。

もっとも、私は別に英語の単語の語源に詳しいわけでもなく、
ジョン・ニュートンの生涯をブログ記事にしたので、そこに意識が行きすぎ、
連想のし過ぎなのかもしれないが、ジョン・ニュートンが
wretch の一語のなかにwreck(難破して漂流した)の経験も込めていたと
すれば、私には腑に落ちるところも多いのだが、考え過ぎなのだろうか?

他の和英、英英の辞書はもっていないのだが、ネットで見る限り、
wretchの言葉の文例に、この「アメイジング・グレイス」が出てくるものが
少なくないようだ。それは、この歌がいかに広く歌われているかの証左でもある。

その関連で検索をしていくと、wretch like me の一節に
『歎異抄』の第3章を連想されてブログ記事を書かれている方々が
決して少なくない。

私も歎異抄に出てくる悪人は、単なる客観的善悪観での悪人ではなく、
wretch like me (私のごとき悪人) という自覚的なものであると思う。


たとえば金子大栄先生などは 「悪人とは当時の哀れな大衆という意味がある」
(正式に引用するには選集を全部読み直さねばならないなぁ)
とおっしゃっていたように記憶するので、もしも英訳をされるとすれば
(されなかったですが) 歎異抄の「悪人」は wretch (like me)と訳されて
いた気がしてならない。

そして、その妄想をすすめていくと、
愚禿釈(ぐとくしゃく)の鸞 と名のった親鸞聖人は、
おそらく英語を書いたとすれば、wretch (like me)の語を
使われたことであろう。


最後に、これはある妙好人(みょうこうにん)の語録である。

「俺ほどのワルはおらんでのぉ
 その俺を救うというのじゃから、
 弥陀の本願は確かにみんなを
 救うじゃろうて」

マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2009-07-18 01:32 | 草仏教


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