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2010年 06月 30日

2010年12月のブログ記事  Long Tall Sally 

b0061413_123386.jpg 草野球チームの なんちゃってヤンキースも 今シーズンの最終戦を終えた。 その翌日、まるでそれに合わせたかのようにシャラポア(妻・日本人)が6年前の誕生日にプレゼントしてくれたクォーツ腕時計の電池が切れた。MLB公認のアナログ時計でNYヤンキースのマークが刻印されているものだ。 今までも2回か3回、電池を替えているし近所の時計屋さんに行けばいいだけの話なのだが、何だか草野球のオフシーズンになったとたんに電池が切れたということで来春までその腕時計を休ませてやりたくなった。 代わりにはめる腕時計を探した。Gショックのレゲエバージョンで、ド派手なラスタカラーで飾られていて点灯するとマリファナの模様が浮かびあがるものは行楽の時には大活躍するが、仏事の席にはふさわしくない。 同じくカシオのプロトレックもあり、これは象印(ハンチングワールド)とのコラボ商品で様々なメーターやコンパスを内蔵し、点灯するとあの象印が浮かび上がる自慢の逸品ではあるが、これもまた仏事に際して僧衣をまとった左手首に輝くのは不穏当なんだろうと感じる。


 

 適切な腕時計を探していたら、グーフィー(先輩僧侶・詳細は後述)からもらった
機械式の自動巻アナログ時計を見つけた。それは引き出しの奥でしばらく時を止めて
いたが、「これがあったか!」と取り上げたとたんに再び秒針を刻みはじめた。
それは私の好み通りの無骨なアウトドア系統の時計ではあるが機械式らしい気品があり、
お葬式ではめていてもおかしくないものであった。


その腕時計をはめて見つめていたら、
このマーヒー加藤とグーフィーと吉祥寺の住職との三人で
結成していた伝説の漫才トリオ 
「ロング・トール・サリー」
の栄光を思い出した。






1996年前後のことだと思う。活動期間は短かったし、
ギャラなどはもらったことはないのでプロとはほど遠いが
オールディーズの名曲にのって登場し、テンポのいい芸を披露した
伝説の漫才トリオが存在した。

三人のなかで身長180センチのマーヒー加藤がいちばん背が低い
という、そのトリオの名は
「ロング・トール・サリー」である。

漫才トリオ 「ロング・トール・サリー」のデビューは、
横浜市神奈川区の寺院を拠点として、日本人のメンバーで
タンプーラやシタールやタブラ(打楽器)などで活躍する
インド音楽楽団(たけしの誰でもピカソにも出演されていた)の
東京での演奏会の打ち上げカレーパーティの席であり、
観衆は老若男女とりまぜて約90名であった。

マーヒー加藤は一応、このトリオのリーダーであった。
オールディーズのスタンダード曲、
「ロング・トール・サリー」 が会場に流れると
長身の三人がエア・ギターとチャック・ベリーばりの
低姿勢でのダック・ウォークと関西イロモノ芸人登場の際の定番である
クラウチングスタイルでの両手首固定の手拍子歩きスタイルを
融合させた歩き方でステージに上がる。
音楽が止むと

「ロングでーす」(マーヒー加藤)
「トールでーす」(グーフィー)
「サリーちゃんどぇーす」(ダミ声で吉祥寺の住職)

という挨拶で、これは安田大サーカスが台頭をあらわしてくる
はるか以前にやっていたことなので、これでつかみはOK。

サリー役の吉祥寺の住職の名前をここでは仮に L.L.ビーン氏としておこう。
彼は当時、吉祥寺の寺の副住職であったともにCBSソニーの社員でもあり、
通販部門でのL.L.ビーンの営業も手がけていたのだ。
彼が会社を辞めて寺院に専念した頃から
アウトドア用品のL.Lビーンもソニー本体も勢いがなくなった。


ともかく、L.Lビーンと私はいっしょにキャンプに行ったことが何回かあるが、
いかに私がアウトドアクッキングで注目を集めても、L.L.ビーンはなんせ
マジックの達人であり、その性格の良さもあって常に老若男女の人気者なのである。
彼はスーツ姿の時も普段着のL.L.ビーンを着ている時も、常に何かマジックの
仕掛けを服にしている。
「仕掛けをして飲み会に行ってもマジックを披露することになる機会は
3回に1回ぐらい。でも、その3回のうち無駄になってしまう2回があってこそ
人に驚きを与えることができる」 
というのが彼の哲学である。
なので、彼はダチョウ倶楽部が流行らす以前から
「そんなの聞いてないなぁ~、聞いてないよ」
と言いながら芸を披露する芸風を確立していた。

そのL.L.ビーン(サリーちゃん)のマジックを中心に、
ツッコミを入れるロング(マーヒー加藤)とマジックに感心するトール(グーフィー)
でもって構成されるのが 「ロング・トール・サリー」の芸であった。
今から思えばナポレオンズとダチョウ倶楽部の芸風に、
ロックンロールのテンポとテイストが加わったものだと思っていただけたらいい。

「ロング・トール・サリー」は初舞台からして女の子たちの歓声が渦巻いた。
L.L.ビーン(サリー)もモテモテ男だったが、上野のご住職である
トール(グーフィー)がまた既婚者で息子二人ながら超モテモテ男だったのだ。
実際、いっしょにキャバクラに行ってこれほどモテモテの人を他にあまり知らない。
そのお店のナンバー1、ナンバー2のキャバ嬢がトール(グーフィー)の隣に
競って座りたがるのだ。
有楽町のバニーガールのお店では、美しいウサギちゃんたちが争うところまで
見てしまった。

トール(グーフィー)は日本人には珍しく 1/fゆらぎ (エフぶんのいちゆらぎ)
の声を出せる人なのだ。
1/fゆらぎとは、わかりやすく言えば音のスペクトル密度が周波数fに反比例する
ゆらぎのことだ。わかるかなぁ、わかんねぇだろうなぁ。
具体例にグーフィー(トール)の声質やしゃべり方に似た人を探せば森本レオである。
グーフィーと話していると、その声から浮かんでくる心象風景は
ろうそくの炎の揺れ、小川のせせらぐ音、青葉からの木漏れ日、飛び交う蛍なのだ。
しゃべっていると癒されてしまうのだ。
その声でサリーちゃん(L.L.ビーン)のマジックに対して
「不思議なことだねぇ」 「いやあすごいもんだねぇ」 と腕を組みながら
アゴをなでつつ語っているだけで、会場に小川がせせらいでいるような空気感を
醸し出すことができるのだ。

余談だがグーフィー(トール)は5千枚以上のR&Bやロック音楽のCDやアナログディスクの
コレクターであり、ローリングストーンズの日本ファンクラブでは会員ナンバーひと桁だ。
なのでグーフィー(トール)のお陰で、ローリングストーンズの東京ドーム公演は
正真正銘の最前列で見たのだった。私の前にはローリングストーンズのメンバー以外に誰もいない。
ミックやキースがすぐ目の前にいるということにも感激したが、
コンサート中、後ろをふり返ると5万人というのが感慨深かった。

ともかく、
「ロング・トール・サリー」での私(ロング・マーヒー加藤)の
役割は 「ツッコミ」であった。
とぼけた文章ばっかり書いているので私にはボケ役が似合うと考えておられる諸兄も
多くいらっしゃることとは存じあげるが、少なくともこの
「ロング・トール・サリー」においてはツッコミでこそ本領が発揮できたと考えている。

「何でやねん」
「んなアホな」
「何やってんねん」
「そんなことありえへんがな」
「やってられんわ」
「そんでどーすんねん」

などの代表的な関西弁でのツッコミ台詞は日常生活のなかでも私の定番である。
関東と関西では深夜番組の制作の芸風が違うといわれる。
あるいは電通が制作するCMでも東京電通と大阪電通が作るものは毛色がまったく違うと
言われるが、それは製作者も無意識のうちにテレビの画面に投げかけられる
「ツッコミの声」というものを(関西では)強く意識していることに他ならないと思う。
テレビというものがほぼパーソナルなものとなってしまった2010年現在はどうなって
いるかわからないが、少なくとも前世紀(10年前以上)までは関西制作の深夜番組は
明らかに家庭の茶の間や学生下宿やお好み焼き屋のテレビの前から投げかけられる
「何でやねん」
というツッコミの声を期待しながら番組が制作されており、その作風は現在でも
『探偵ナイトスクープ』 などにその名残を見ることができる。



来週12歳になる長女と8歳の息子は
「お父さんといっしょにテレビを見る時はくだらない番組の方がおもしろい」
と言ってくれる。私が子どもといっしょにテレビを見る時は
ツッコミの合いの手をところどころに入れていくからだ。

ツッコミというのは、漫才トリオをバンドにたとえるならばリズムキープなのであろう。
明石家さんまやダウンタウンといった関西よりも東京での生活が長くなった芸能人でも
いっこうに関西弁が抜けないのはこのリズムキープの問題が大きいのだろう。
特にツッコミ話芸においてそれが顕著である。
8ビートばっかり叩いてきたドラマーに4ビートをやるよと言っても無理なのだ。
さんまのトークなどは本質的にツッコミ役であり、だからこそ素人あしらいが上手い。
試しにさんまやダウンタウンの浜田から 「何でやねん」 というドラムのフィルインの
ようなセリフを取り上げて使えなくしてみたらいい。
たちまちにして華麗なトークは凡庸なものになっていくだろう。

さて、サリーちゃん(L.L.ビーン)は「魔法使い」の異名の通りマジックの方は
完璧であるが、しゃべりの方はトール(グーフィー)同様癒し系なのであるが
ツッコミどころは満載である。お笑いに関してもなかなかの素養があるのでタイミングよく
「何でやねん」 などのツッコミを入れると自然体やアドリブでもお客さんがドっと沸いた。

ツッコミの動作に関して私(ロング)は、「どつき」を封印して非暴力主義を貫いた。
まだ 「ますだおかだ」 が頭角を現してくる以前の話ではあるが、
おかだ の手の甲で相方を軽くなでるようなエンジェルタッチのツッコミ動作も視野には
入っていた。しかし、私(ロング)のツッコミ動作は当時全盛だったピート・サンプラス選手の
バックハンドボレーのようにダイナミックなもので、両手羽を逆方向に大きく広げつつ右手の甲は
サリーちゃんを「何でやねん」の掛け声とともに襲うのであるが、非暴力主義者の私(ロング)は
空手の寸止めの技を応用し、L.L.ビーン(両意味)の服には接触しても彼の皮膚には一切の
ダメージを与えなかった。L.L.ビーン(両意味)の服は軽く揺れつつ、サリーちゃんは痛くない。
その技の凄みを本当に知るのはL.L.ビーン(サリーちゃん)その人のみであった。

ロング(マーヒー)はそのツッコミ芸で話芸の方のリズムとテンポキープをしつつ、
サリー(L.L.ビーン)はボケを入れつつマジックを華麗に決め、
トール(グーフィー)は両手を組みながらアゴをなでて
「いやあすごいもんだねぇ」 という癒しの合いの手を入れていく。

漫才の最後はプラスチックのダミーの卵がホンモノの卵になるというマジックが
入り、それを割ってコップのなかに入れる。
私(ロング)が書いた台本では、締めは迷いなくヨガのニワトリのポーズを決めて
首をシェイクしながら
「クックドゥルドゥルドゥ~!」 
と絶叫してフィナーレを迎え、
それを合図に再びオールディズの名曲 「ロング・トール・サリー」 が流れるという
斬新かつアメリカンかつモダン(前衛)な落としどころを予定していたのだが、
最後の最後になって、それまで順調にマジックだけではなく漫才師としての潜在能力も
見せてくれていたサリーちゃんがエンディングだけはなぜか急に恥ずかしがって照れてしまい、
「もうケッコー!」 
という陳腐なオヤジギャグで落としてしまったことだけがとても残念だった。
土壇場で安全過ぎる着地を迷いながらチョイスしたような気がする。

しかしながら、これはトールとサリーが元々人気者であることに起因するのだが
「ロング・トール・サリー」(ダブル意味)の登場でキャーキャー言われるのも快感だったし、
つい30分前まで神妙な顔でインド音楽を演奏していたメンバーも含めて大人数が
腹を抱えて爆笑していた光景が目に入ってくるのも嬉しいものだった。
「ロング・トール・サリー」(漫才トリオ)はたいへんな好評を得て
所属する真宗大谷派という大手プロダクションには出演依頼が殺到したのであるが、
三人のスケジュールが合わず、ごく短期間の活動の後に発展的に解散した。

サリーちゃん(L.L.ビーン)は私とシャラポア(ロングの妻・日本人)の共通の友人であり、
シャラポアはトール(グーフィー)のことも慕っている。
だから私がシャラポアがプレゼントしてくれた時計をしばらく置いて、代わりに
自動巻時計をしていても全く気を悪くしないのも良かった。
「あっ、グーフィーさんからもらった時計だ、懐かしいね」
と好意的だ。

この時計が、あの奇跡の癒し声を彷彿(ほうふつ)とさせる
ごくごく小さな秒針を動かす機械音で、
「もうこんな時間ですよ」
と、私の日常生活にツッコミを入れてくれている。


マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2010-06-30 07:17 | 雑草


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