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2011年 01月 27日

草仏教経済学(15) 借金

b0061413_22395645.jpg 僧侶のくせに金の話をよく載せることには理由がある。まず第一は心のボスであったD師匠(故人)が「結局のところ金の話とセックスの話ができない宗教者はニセものだ」とよく言っていた。禁欲を旨としたり戒律などとしている宗教者と対談する時には「そんで本当のところ性欲の処理はどうしているの?」と真剣な顔で問いただしていた。「精神力で克服している」というような答えをした時には、なぜか烈火の如くに激高しつつ「ホントに?ホントに?」と問いただしていた。私は観無量寿経の「蜂蜜ペロペロ」のくだりでも欲情するようなエロ人間でありD師匠から「お前はバカだが正直だ」という妙な信頼を得ていた。(ただ、ブログでその方面に言及するにはまだまだ表現力と品格を磨くことが私には必要だな) もうひとつは、子どもにお小遣いというものをやるようになってから、貯め方の方は節約して我慢すればいいというシンプルな教えに極まるのだが「金というものは何に使えばいいのか?」と問われた時に私にもドキッとするものがあった。畢竟、子どもにも通じる言葉として「ありがとうと差し出されたお布施というものが原資となっているお小遣いだから、お客様扱いされて勘違いした消費者という王様にならず、ありがとうと言って買えるものを買え」と言った。それがこの草仏教経済学のはじまりである。

今春、中学生になる娘がいる。
もう数年したら 「借金」 についても教えてやらなきゃなんない。





借金が悪いと言ったら必死に資金を集めて操業していらっしゃる多くの方々に
あまりにも失礼である。とても言えない。
第一、私にはそう言う資格もない。
ホント、子どもにさえ言える資格はない。
親から借金をして完済とはとても言えない返し方をした。
無利子であったとはいえ、奨学金などは借りられるだけ借りまくった。
(無利子だからそのうち貨幣価値も変わるだろうと思っていたが・・・)
20歳代の時は、ローンで車を買った。(しかも中古車だった)
「割高になるなぁ」という勉強にはなった。
パリダカにも出られるようなオフロードバイクもローンで買った。
これもパリダカというよりも割高だった。

私の学生時代というものは、クレジットカードの方は普及前夜という感じだったが、
いわゆるサラ金は台頭してきた時代でもあった。
これには幸いなことに1回も手を出さずに済んだ。
ただ、学生時代の私の周囲には、けっこう手を出す者がいた。
恐るべき高額の利息に対してさらに利息がつく、いわゆる青天井方式の頃だ。

多種のアルバイトをやっていて、いろんな仕事をかかえながら合間に大学の
試験に追われるというような日々であったから、借金までに追われるのは
嫌だった。そして遊びにはアルバイトで稼いだ金で思いっきり遊びたいという
最低限の健全さはもっていた。

青木雄二の『ナニワ金融道』という漫画がある。
この物語のはじまりは、主人公の青年があらゆる銀行への就職活動を
するのだが、結局最終的には内定をとれずにヤミ金に就職するところから
はじまる。
銀行には就職できなかった理由というのが、その青年が1回だけサラ金を
利用した前歴があるからだと漫画は語る。
別に返済せずにコゲつかせたわけでもないのに、
サラ金利用者のリストを銀行の人事部は把握しているのでは
ということを示唆している。


この話は本当なのか?
いろいろな職業の方々と時にディープな話ができることが
私の職のいいところだと思っているが、
この話は否定も肯定もする人がいない。
あ、これ以上書くと周囲の人に迷惑がかかる可能性があるな。

私は、本当だと思っている。

私が19才の時、JAZZ喫茶でアルバイトをしていたのだが、
奇妙な客が来た。
まあ奇妙な客ばっかりだったのですが・・・
かなりの大音量でJAZZのアナログレコードをかける店なので、
当然、JAZZファンか、オーディオマニアが客の主流だった。
時々、JAZZファンでもオーディオマニアでもない客も来た。
たとえば店のすぐ近くの京都府立大学病院の入院患者が抜け出して
やってきて 「キリンビールの小瓶と角のダブルをロックでくれ」
とか言う期間限定の常連客もいた。強者だったな。

さて、その奇妙な客というのは紺のスーツにネクタイで、ピシッとしたカッコを
した眼鏡の中年で、コーヒーを注文するとJAZZを聴くでもなく、
タバコを吸うでもなく、何だか店のなかをくまなく観察しているような挙動が
あった。

警察の関係者なんだろうか?と思った。
店番は私一人で雇われマスター状態。
客もその人だけだったので、ちょっと茶目っ気が出た。
オーディオのボリュームを落とし
「コルトレーンかなんかをかけましょうか?」
と、親切を装って意地悪な声をかけてみた。
JAZZを聴きにJAZZ喫茶に来る人で
ジョン・コルトレーンの名前を知らない人はほとんどいない。
「あ、お願いします」
と彼は言った。
「コルトレーンの何をかけましょうか?」
と言うと、彼は沈黙した。
その沈黙に耐えきれなくなったのか、唐突に彼は口を開いた。

「・・・・・・ここでAさんという人がアルバイトをしていますよね」
とその間に耐えきれなくなったのか、急に話を変え始めた。
「ええ、Aさんにはお世話になっています」
「Aさんの勤務態度なんか、正直どうですか?」
「えっ?真面目な人ですよ。ここにある5千枚のレコードの整理なんかも
Aさんがしてます。JAZZのこと色々教えてもらっています」
「Aさんと、少額でもお金の貸し借りをしたことはありますか?」
「いいえ、まったくありません」(キッパリ)

実は、私は最後まで警察か興信所だと思っていたが、
後日、「Aさん、Aさんのことを調べているヤツが店に来ましたよ」
とAさんに一部始終を話すと、顔色を変えて
「俺の悪口というかさ、マイナスになるようなこと言ったか?」
と真剣に尋ねてきた。
「とんでもない、むしろ最大限の絶賛をしましたよ」
と言うと胸をなで下ろしていた。
Aさんはある銀行に就活中で内定寸前であったのだ。
後日、Aさんは見事に内定をもらってきた。
おそらくだが、特に交わした最後の質問で分かるのだが、
JAZZ喫茶といっても特に夜は酒も出すし、水商売といえば水商売だ。
アルバイト先がいかがわしくスキャンダラスな店かどうかを
入念にチェックしにきたのだ。
内定後、Aさんは私におごってくれた。
祇園のスナックではなくてうどん屋で一杯というところが
銀行に就職できるほど堅実なAさんらしくて良かった。
(いやホント、嫌みな意味じゃなくて・・・)
ウソではなくてAさんと金の貸し借りをしたことはなかったが、
貸しと借りは、この時に初めてお互いに出来た関係になった。

あ、ここで話をオトしちゃいけない。 続き、続き。

「奨学金以外の借金はしちゃダメだぞ」 と子どもには教えてやりたい。
教えてやりたいが、どうなんだろう?

その銀行そのものが、この超低金利時代にして貸し渋る。
お金そのものが動脈硬化というか、渋滞していて動かない感覚だ。
ひと言でいえばデフレだ。

一方、全世界を見てきたわけじゃないけれど、繁華街や駅前で
まず目に入ってくるのが消費者金融の看板である国なんてないと思う。

「友だちから金を借りちゃダメだぞ、貸すのも友だちを失うぞ」
と、子どもには教えてやりたい。教えてやりたいが、どうなんだろう?

長くなったが、ブログの最初に戻る。
いちばん最初の写真に戻る。

私は生ビールを飲んでいる。
「ありがとう」と差し出されたお布施が原資となり、宗教法人の維持に
かなりの割合を費やすものの、私もそこから給料をもらう。
給料からはしっかり税金を払い、公共料金やら生活費やら養育費やら
色々払わなければならないが、幸いに頻度はともかく生ビールを飲むぐらい
のゆとりはある。
ライバルを蹴落としつつ全力疾走をした結果の収入というような質ではないが、
私には私のような者ならではの苦労もあり、その慰労も兼ねてビールを飲む。
ただ、普通の消費関係と真逆に「ありがとう」と差し出されたお金が原資なので
「ありがたい!」とビールを飲むのは私の仁義だ。
「ありがたい!」で、ビールの味もさらにUPしてくれるのもありがたい。

そのジョッキ越しに子どもを見る。
私はちょっと勘違いをしていた。
日本人は、もしかしたら、みんなとんでもない楽天家かもしれない。

今、国会で予算が審議されている最中であるが、
その国債の割合とその展望をみていると、これは楽天家集団だ。
「我が国は、他国から借金をせず国が国から金を借りている」
という教科書的な認識の仕方が間違っていた。
もっと実体的に認識すべきであった。

日本人の大人は、今の子どもたちから借金をしているようなものなんだ。

言い方を変えると、依然続く少子化傾向の少ない子どもたちが、
少数精鋭だけにみんないい子に育って、みんな親孝行で、
みんな揃いもそろってものすごく稼ぐ大人に成長すると思っている。
人間や施設・公共物の老齢化・老朽化の問題も、財政問題も、
みーんな何とかしてくれると思って借金を重ねている。
こりゃ相当明るい未来をロマンをもって信じていなきゃできない借金だ。

競馬やパチンコで負け続けている人は、ある意味、夢多き人である。
だって、最終的には相当な負け分を取り返せると
ホントに心から信じているんだもん。
男のロマンは貧乏を呼ぶ。

ロマンはないと人生まったくつまらないわけだが、
そう感じてみると、少なくとも子どもに
「借金はするな」
ということは言えなくなっちゃった。


マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2011-01-27 23:58 | 草評


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