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2011年 07月 28日

みうらじゅん著 『マイ仏教』 (新潮新書) を読んで (2)

みうらじゅん著『マイ仏教』(新潮新書)を読んでの感想を
時々、思い出したように時々書いていきたい。
この新書に対して真剣に読解していくという態度も
ヘンだといえばヘンなのだが、
素通りすることもできないのだ。

まえがきで、いきなり
「少年時代の夢をこじらせて」
という表現が出てくる。

「こじらせる」という言葉の吟味がいい。
この本にはその表現が出てこないが、
以前、みうらじゅん氏がラジオで
「私は学生時代に童貞をこじらせてしまいまして」
と言ったのを聞いて、車のなかで笑ったことがある。

「こじらせる」という表現を使う時にもっとも適切な言葉は
何といっても 「風邪をこじらせる」 だろう。

風邪と信仰は似ているところがある。
うつるんです。
伝染するんです。

最近、文芸春秋から出た本で
短歌作家の枡野浩一氏の『くじけな』という本がある。
この、ほんのひと文字を変えたレトリック集のなかに
「夢をあきらめな」という言葉があった。

夢教(とでも言うべきもの)に対する痛烈なメッセージに、
結果的になっていると感じる。

「くじけない」「夢をあきらめない」という、
時として大変大事なことがらであるがゆえに
宗教の意図的布教のごとく、その言葉に毎日のように接するような
文化のなかにいると 「ああ、伝染していたなぁ」 と感じる。

もちろん、夢を無益なものとは言えない。
夢がない人生はコーヒーのないクリープである。
ただ自分の夢で自分を呪縛している人が増えてきている風潮を
ヒシヒシと感じる機会が増えてきている。

身近な例でいえば私の娘である。
小学校の卒業間際に
「自分の夢を作文にしなさい」
という命題を与えられた。それは自分は何が好きなのかということを
文章化して客観視することにおいてはいい作業である。
ただ、そこで娘は
「物語も書けるイラストレーターになりたい」
と書いた。
それはそれで素晴らしいことであり、そのきっかけには
この草仏教ブログにときおり自分のイラストを掲載した際に
かなりの方々にほめてもらった嬉しさがきっかけとなっているので
私にもブログの主宰者として大いに関係がある。

問題は、中学生になった時に
「自分はイラストレーターになるのだから美術部に入らなきゃ」
と、クラブ活動を修養の義務のように思い込んでいることだった。

「おいおい、自分の夢で自分を縛るって何だかヘンだぞ」
と、ポツンとアドバイスを贈った。
結果的には吹奏楽部に入った。
自分の夢の予定どおりに美術部に入ってもいい出会いがあったかもしれない。
それはわからない。
ただ、自分の夢への現段階での固執が強すぎたら
夢をこじらせていた可能性は大きかったのではないかと感じる。
こじらせてもオモシロイといえばオモシロイのだが・・・
とにかく、大勢の仲間とともにブラスバンドというバンドの魅力に目覚めて
今は活き活きと演奏活動に没頭している。
没頭は頭さえ没にしちゃうので、
頭で考える夢よりもさらに素晴らしいことのように思える。
イラストを描くことも別に辞めたわけでも断念したわけでもなく
好きで暇を見つけては描いているので吹奏楽部の先輩から
「来年の新入部員募集のポスターは君が描いたらいいね」
と言われてとても喜んでいる。
良かったと思う。

ただ、 「音大に進学する」
なんてことを言われた時には
「おいおい、クラシック以外のプロミュージシャンは
 音大出身よりも美大や美術専門学校出身の人の方が多いぜ」
なんていうアドバイスをするかもしれない。

けっこう娘や息子の存在自体が私の夢であるので、
私も知らず知らずのうちに父親として夢をこじらせているのだろうとは思う。

とにかく 『マイ仏教』 で語られるみうらじゅん氏が
こじらせてしまった少年時代の夢というのが
「地方の寺院の住職になって大好きな仏像を拝む生活をしたい」
という夢をもち、そのためのエリートコースとして
中高一貫のシャクソン(釈尊)系の私立男子校に入学する。
入試の面接でそれまでやってきた仏像研究の成果を述べ、
学長から「私は君のような学生を待っていたのだ!」と言わせた。

作家の京極夏彦氏も少年時代から寺の住職になりたくて仕方なかったと
言っていたが、みうらじゅん氏はかなり珍しい夢をこじらせたのだな。


マーヒー加藤


※ 追記

たまたま、『マイ仏教』のなかでもひと文字だけで意味がまったく変わる
「人間けだもの」
という言葉がある。
解説はヤボだとは思うが、
相田みつをさんの「人間だもの」という言葉が背景にある。

まったく、われわれはインゲンとひと文字違いの存在なんだよなぁ。
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by kaneniwa | 2011-07-28 05:42 | 草評


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