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2012年 01月 05日

コッヘル161番 北と南の奇跡の出会い・雑煮

b0061413_20574290.jpg 今年の元旦の雑煮を生まれて初めてコッヘルで食べた。柚子の皮の黄色を写真を撮る時に添えるのを忘れてしまった。鶏肉から出た油がチタンのコッヘルに乱反射して実際よりもかなり脂っこそうに写っている。いつもコッヘル写真は食べる直前に秒殺で撮影しているのだが、特に出来がよくない写真だ。しかし、シャラポア(妻・日本人)に「今年もヨロピク」という軽い新年の挨拶をした後にこの雑煮を一口食べた瞬間に「どっぴゃー!」という言葉が自然と口からため息とともに飛び出した。2012年になって私が最初に発した言葉は「今年もヨロピク」であり、その次が「どっぴゃー!」であった。大晦日にシャラポアがたっぷりの北海道産昆布とたっぷりの鹿児島産鰹節でだし汁を準備していてくれたことがこの感動のいちばんの要因だったと思う。改めて感じるのもおかしいのかもしれないが、栄養学的にグルタミン酸を代表する食品の昆布とイノシン酸を代表する鰹節との絶妙の出会いは、考えてみれば北海道をその代表とする北の産物と九州をその代表とする南の産物との邂逅(かいこう)でもあるのだ。そして九州よりもさらに南方である沖縄県において昆布が伝統的に多く消費されているということは、民俗学などでよく語られる「アイヌ文化と琉球文化は水流交通によってかなりの昔から交流していたはずである」という説に信憑性を感じさせてくれる。日本料理の調味の基本ともいえる昆布と鰹節のコンビネーションの奥深さは、この北と南という距離もその主因かもしれない。

b0061413_205893.jpg ここまで書いてきて、どうしても言及したくなった東京・池袋の小さなお店がある。池袋駅の北口(西武のある東口、東武のある西口の他、やや東武よりに北口というものがあるのです)の交番から徒歩で7〜8分というところだろうか。 ウタリ という名前のお店である。写真のようにカウンターだけで12人ぐらいで満席になる。でも、住友金属バスケットボール部のコーチをしていた頃の岡山恭崇さん(身長230センチ)もこの店のカウンターに何とか座れたのだから私なんかは充分に座り心地がいい。ご亭主は北海道、奥さんは長崎県の五島列島のご出身だ。ウタリという名前のとおり北海道の産物を炭火で焼いたものが中心の小料理屋さんだが、時々、五島列島の海産物もメニューにある。出汁はまさに北海道の昆布と九州の鰹節である。池袋という騒がしくにぎやかな街の雑居ビルの二階にあって奇跡のような静かさ。カウンターに座ると炭火が軽くはぜてキューンと鳴く音が聞こえる。奥さん(以下、発音すれば同じだが姉さんではなくて姐さんと書きたい)のトークはとてもおもしろく華麗だ。そのトークに少しだけ離れた調理場からご亭主が「バカだなぁ」とか「おめぇはなにをバカなこと言ってるんだい」という間の手のような言葉を絶妙のタイミングで低くていい声で投げかける。もしくは客同士の会話でもおもしろい話にはかみ殺したような笑い声をプレゼントしてくれるのだ。それらこのお店の音はPCM録音機かDATの最高機種で録音しておきたいぐらいだ。料理もいい材料を炭火で絶妙の火加減で焼いてくれるものが中心だから素晴らしくないわけがない。今の時期なら活きたタラバ蟹を炭火で焼いてくれるものが絶品である。(ただし、他はそんなに高いお店ではないけれども、このメニューだけほんのちょっとだけ高い) 結婚式を2ヶ月後ぐらいに控えた14年前の今頃の時期に、私は満を持してシャラポア(当時婚約者)をこのお店に案内してご亭主と姐さんに紹介した。お店に入った瞬間からシャラポアはこのウタリというお店の大ファンになってしまったのであるが、姐さんの華麗なトークに腹をよじらせながら笑っていたシャラポアが私がトイレから帰ってきた時には目を潤ませてしんみりしていた。(雑居ビルなのでトイレはお店の外にある) 私がお店を出る間際にトイレで席を外していた数分の間に姐さんはシャラポアの手を握り「カトちゃんはいい男だよー、あんた幸せになれるよ」と語り、ご亭主は調理をする手を休めることなく
「あたぼうよ!」
と言ってくれたらしい。昆布と鰹節のようなコンビであるウタリのご夫婦のおかげで、私とシャラポアは結婚式の2ヶ月前からすでに夫婦であったような気が、しみじみとする。


コッヘルバックナンバー

※ ウタリさんでの写真は1年半ほど前のものです。
  「ちょっとブログに掲載させてね」(マーヒー)
  「いいよ」(姐さん)
  「宣伝にもなるんじゃねぇか、店が小さいから
   多人数で押しかけられると困るけどな」(ご亭主)
   というような形で掲載許可のようなものをいただいたのですが、
   それから1年半は池袋周辺に寄る機会がなかったこともあり、
   ズルズルと時を経過させてしまいました。
   新年早々謹んでお詫び申し上げます。

 マーヒー加藤 
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by kaneniwa | 2012-01-05 22:41 | 草外道


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