2012年 08月 16日

追悼記事(25) 親愛なる 河童猿 さん

お盆には亡くなった人々が帰ってくるという。

私はもうちょっと正確に表現してみたい。

お盆には生きている人々が帰ってくる。

ただし、生きている人々が混雑や渋滞のなか
子ども連れであったり、苦労までして帰ってくるモチベーションは
亡くなられた方々が生み出してくれているものである。
亡くなられた方々がいて、生きている方々が帰ってくる。

京都の五山の送り火は、生きている人々が松明を持っている。
送り火を見上げる人たちは生きている人々である。
でも「亡くなられた方々を送る」というモチベーションがなければ
成立しないものである。

後の直接の対面ではなく、初めて河童(柳名・河童猿)さんと会ったのは
13年前であった。当時生後10ヶ月の娘とシャラポア(妻・日本人)との三人で
アパートに住んでいた私は、配達されてきた毎日新聞の「万能川柳」の欄の
その日の秀逸作品を読んだ瞬間に大声で笑った。

「ナンパした駅に今じゃあ娘を迎え さいたま市 河童猿」

娘という文字を「こ」と読んで、このわずか五・七・五の世界で
駅という空間に一瞬にして20年ぐらいの時間が猛スピードで流れる文学になっている。
そしてこのユーモアセンスのなかに何ともいえない家族愛が感じられた。

その河童さんと直接お目にかかれてお話ができるという貴重な機縁がいただけたのは
それから約2年後だった。
場所は、毎日新聞社の東京本社。
京都の坂口ちろるに誘われて
「万能川柳の集い」というパーティに参加したのだ。
坂口ちろるは当日近くなって事情で急に欠席したのだが、
退屈するどころではなかった。
初対面であるのにその川柳名を聞けば作品が思い当たる人がほとんどで、
その日は昼間から真夜中まで、私はほとんどの時間、笑っていた。
喫煙所では仲畑貴志さんがチェーンスモークをしていて、
そのすぐそばに河童さんが座っていた。

万能川柳の集いは昼間だったと思うが、有楽町の地下のお店で
サンドイッチでビールを飲みながら楽しく談笑し続け、
広告業界の人が聞いたら仰天する話なのだが仲畑貴志さんが
「みんな帰らないんだなぁ、よし!俺の事務所でカラオケやるか!」
と言うことになり、その場にいた30人だったか40人だったかで、
乃木坂の仲畑貴志事務所に流れ込んだのだった。

CM撮影用の機材やビデオテープが置いてある部屋をくぐり抜け、
確かにカラオケ用機材が置いてある部屋があった。
東京タワーが真正面に見え、何だか「演歌の花道」のスタジオみたいだった。
そこでウイスキーを飲みながら深夜遅くまで盛り上がったのだ。

仲畑貴志さんがチェッカーズの「ギザギザハートの子守唄」を歌い、
私は  BOOGIE MAN の「パチンコマン」を歌った。
(このラップ調のレゲエはお経の早読みより楽だ)

河童さんは丁寧にデジカメでみんなのスナップ写真を撮ってまわって
くれていたが、楽しそうに談笑する川柳仲間をニコニコしながら
見つめていらっしゃった。
「河童さんも何か歌ってよ」
という声に、マイクをもった時の盛り上がりぶりに、
いかに河童さんが多くの人たちに愛され慕われている人なのかがわかった。
そして歌わたのが 「すごい男の唄」 だったと記憶している。
作詞が仲畑貴志さん、作曲が服部克久さんというすごい男の組み合わせだ。
「ビールをまわせ 底まで飲もう あんたが一番 わたしが二番 ドンドン!」
何だか、河童さんほどこの歌を歌うのにふさわしい人はいないように思えた。
温厚なリーダーシップ。
柔らかな人格者。
自分は一歩ひいて周囲が楽しんでいることを心から楽しみ見つめる眼。
とにかく万能川柳の仲間たちが大好きでしょうがないという河童さんが、
無条件に大好きになってしまった一日だった。

その後、ゆかい模様という河童さんのサイトに頻繁に遊びに行くようになり、
そこでもまたヒヤケナス先生をはじめとして多くの人との接点を作ってくださった。

河童さんのブログ
ヒヤケナス先生のブルースを貼ってくださっていた。
ヒヤケナス先生と交流のあった方々、特に河童さんのように親友であった方には、
怒られるかもしれないと思ったものをとても喜んでくださった。
もっとも「ありがとう」を言いたい人から「ありがとう」を言われた感激を一生忘れません。

ずっとお世話になっていながら、別なご縁のある方の
大事な儀式を勤めなければならず、お葬儀にもお通夜にも顔が出せません。

でも、せめて10年間休んでいた川柳を作るということを再開し、
河童さんが大好きだった人々の集いに参加させてもらおうと思います。
その場をあの穏やかな眼で見つめてください。
ありがとう河童さん。

加藤まひと
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by kaneniwa | 2012-08-16 23:59 | 草評


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