草仏教ブログ

kaneniwa.exblog.jp
ブログトップ
2012年 09月 09日

名曲草鑑賞 (32) セロニアス・モンクの『ソロ・モンク』

SOLO MONK (CBS)
- Thelonious Monk

Dinah
I Surrender, Dear
Sweet And Lovely
North Of The Sunset
Ruby, My Dear
I'm Confessin' (That I Love You)
I Hadn't Anyone Till You
Everything Happens To Me
Monk's Point
I Should Care
Ask Me Now
These Foolish Things (Remind Me Of You)
Introspection

Thelonious Monk (p)

1964/10/31 #2,3,4,8,10
1964/11/02 #1,6,7,9,12
1965/02/23 #11
1965/03/02 #5

今まで、曲ごとの批評のようなものをコラム的に書いてきたことはあるが、
ダウンロード時代(それもいつまで続くかな?)では「何のこっちゃ?」と
言われるかもしれないが、「アルバム」としてでなくてはどうしても語れない
ものもあり、セロニアス・モンクのソロピアノ演奏のアルバムをとりあげる。

このアルバムに初めて接したのが、学生時代にアルバイトをしていた
「しあんくれーる」という名のジャズ喫茶(今では死語に近いかもしれないが
むしろ地方でがんばっているお店が全国にはある)にやって来たお客さんの
リクエストであった。
京都市の荒神口、「しあんくれーる」にはなんせ6000枚もアナログLPがあるので、
この『ソロ・モンク』というアルバムは、それまで聴いたことがなかった。
リクエストに応えてリストをもとにセロニアスモンクのコーナーから
アルバムを探し出し、ガーランドのプレイヤーのターンテーブルにのせ、
音が出てきた瞬間から、そのお客さんはコーヒーカップをもちながら
ずっとニヤニヤしながら、時にはクスクスと笑っていた。
そのお客さんが、後に麻雀の待ち時間を中心に私にギターを教えてくれる先生になった。
今、何だか事情はよくわからないが、先生は今、スペインに居るみたいだなぁ。
ずっと以前からの慣習で「クスミ先生」と呼ばせていただきたい。

その、クスミ先生との最初の出会いの時には
「そんなにこの演奏、おもしろいですか?」
と声をかけたら
「おもしろいねぇ、わはははは」
と言われただけで、まったくその意味がわからなかったが、
今の私なら何となくそのおもしろさがわかる。
『ソロ・モンク』の音を聴くと、今の私もまた、ニヤニヤしてしまう。

クスミ先生がその時に味わったおもしろさと、もしかしたら、
その質はものすごく違っている可能性もあるけれども、
私が感じているニヤニヤするおもしろさは、あえて文章化すれば次のようになる。

住宅街を歩いていて、
ショパンのノクターンあたりが、繊細なタッチで聞こえてきたとする。
何となく「誰が弾いているのかなぁ」なんてことを考えてしまう。
物憂げな美少女が弾いているのだろうなぁ…と想像していると、
巨体の男子学生が
「それではレッスンに行ってきまーす」
とショパンの楽譜を抱えて出ていった…なんてことも
あったような、なかったような。

さて、この『ソロ・モンク』の音を、そういう状況、
つまりは住宅街を歩いている時にふと耳にしたら、どう思うだろうか。
それを考えるとニヤニヤせずにはいられない。

力強いタッチからして、まず女性であることは考えにくいが、
弾いているのが男性であろうと女性であろうと、
「陽気な、あぶない人が弾いている」
というイメージを私はもってしまうだろう。
でも、あぶない人が弾いているのだから、危ういからその場を立ち去ろうとするか?
ということになると、まったく逆に
「わはは、何だこれ?」
と思いつつ、いつまでもその場に居て音に聞き入り、
どんな人が弾いているのか、その姿を見るまでは張り込みをしてでもその場に
居続けることを禁じ得ない好奇心を抱かせてくれることだろうと思う。

この『ソロ・モンク』と出会ってからかれこれ30年、
実は意外なところでそのサウンドに出会って驚くことが多い。
たとえば、NHKの教育番組の、しかも子どものための科学番組などで
ページがめくられるような展開の時に
Monk's Point が流れてハッとさせられたことがある。

東京の井の頭公園で大道芸人がパントマイムを演じている時に、
Ruby, My Dear や Ask Me Now が使われていて「なるほど」と思ったこともある。

Dinah の曲は、エノケンが『エノケンのダイナ』として、
「浅草の殴られ屋稼業」というような突拍子もない歌詞をつけているが、
その喜劇役者のおもしろさに勝るとも劣らない演奏を
ピアノ一台でセロニアス・モンクは展開している。

まず芸があり、そこに術を加えて芸術にしている感じがする。

マーヒー加藤
[PR]

by kaneniwa | 2012-09-09 01:51 | 草評


<< オリンピック東京誘致が本気なら...      草仏教掲示板(42) にんげ... >>