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2012年 11月 01日

シェラトンの奇跡

b0061413_23354166.jpg 流通業界や美容師さんのご家庭なども心境をともにしてくれると思うが、寺院で生活する家族は土曜日曜の週末や連休中などに旅行に出かけることは、なかなかできない生業である。3年前、小学生だった長女がポツリとこう漏らした。「うちは家族でディズニーランドに行くことなんかは、無理なんだよね…」その言葉が胸に刺さったシャラポア(妻・日本人)は私にこう言った。「子どもには我慢を教えなきゃいけないけれども、願いを諦めさせたら我慢もできなくなっちゃうよ」と。そこで3年前に必死に日程をやりくりし、緊急時の体制を整えてディズニーランドのハロウィンに家族旅行することとなった。スケジュールを確保するのに大変な苦労をしたので金銭的にはある程度糸目をつけないことにした。節約に行くのではなく日頃の節約を忘れるために行くのだ。しかし思考としては単純に、アメリカ文化のディズニーランドに行くのだから、やっぱここはアメリカ資本のホテルに泊まるべきだろうと、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルを選んだのであった。子供連れの家族向きのトレジャーズルームという部屋をとった。これからこの部屋に宿泊するご家族にはネタバレのようなものになってしまうが、話の伏線としては重要なことであるから賞賛を込めて書く。ベッドの付け根というか足元の部分に小さなな隠し扉があることを子どもが見つけ、扉を開けるとそこにはペントンというホテルのキャラクターであるペンギンのペンダントが鎮座していた。子どもの目線とワクワクしながら部屋をチェックする子ども心がなければ気がつかない扉である。これはもらっていいものかをホテルスタッフに聞くと「よく見つけたねぇ、これは宝探しが大好きな子どもへのホテルからのプレゼントだよ!」と言われ、子どもたちは「うわぁー!やったぁ!」と歓声をあげた。その様子を見ていて夕食もこのシェラトン内のレストランでとることにした。(うははは、金に糸目はつけないようなことを言っていても夕食は他で安く済ますつもりだったのだぁ)

b0061413_2336478.jpg ホテル内の「舞浜」という鉄板焼きのお店に入った。鉄板焼きといっても私が普段の行きつけにしているところとはやっぱり違って高級ステーキハウスという店構えである。ま、考えたら3人の子どもを連れながらシャラポアとボトルワインを飲めるなんていうのもディズニーランドの近くのホテルならではだ。さすが高級店で、専門のサービス係の若い女性が私たちのテーブルに付いてグラスの赤ワインがなくなりかけると実に良いタイミングで注いでくれた。その女性は「私はまだ新米でサービスに不備があったらお許しください」と言っていた。それは本当のことだったのだろうが、逆に私はそこに研修なり修養の質の高さというようなものを感じていた。シャラポアがトイレなどで席を外した時に「いい奥様と素晴らしいお子様たちですね。皆様のようなご家族が私の理想です」と言ってくれた。きっと私が席を外した時には「いい旦那様ですね」とか言ってくれていたのだろうが、嫌味などはまったくなく笑顔が自然な感じがいい女性だった。ここまでが3年前のお話でこれからは数日前のお話となる。毎年ハロウィンとなると「ディズニーランドに行きたい!」とコールしてきた子どもたちのリクエストを2回は我慢させて、3年目の今年はやはり苦労して日程を確保してディズニー参りをすることになった。宿泊先を決める時に、前回の印象が私たちにとって非常に良かったことが忘れられず、やっぱりいつものシェラトン(わはは、2回目だけどね)ということになり、インターネットで予約を済ませた瞬間に子どもたちとシャラポアから拍手が巻き起こった。ただし、今回は大人用の部屋で、夕食も舞浜駅近くのハンバーガーで済ませた。ただし「KUA' AINA」というやっぱ普段のハンバーガーショップとは違うハワイアンハンバーガーだった。チェックインの後、6歳の末娘がホテル内を散歩したいと言い出したので手をつないでホテル内を散策した。6歳の末娘は3歳の時のシェラトンをハッキリと覚えていた。ホテルの広い中庭などを歩き、鉄板焼きの「舞浜」の前を通りかかった。「ここは覚えているか?」と末娘に問うと、首を振った。その時、自分でも信じられないことが起こった。デジタルカメラの液晶画面のようなイメージで突如、3年前のサービス係の女性の名札が頭のなかで浮き上がったのだ。ちょうど「舞浜」の若い男性店員さんが出てきた。「加藤というものですが、3年前にここで食事をした時にAさんという女性に大変に親切にしていただきました。Aさんは今でも居られますか?」と尋ねてみた。「私は3年前には居なかったものですから上の者に訊いてみます。5分だけここでお待ちいただけますか?」と言って、ほぼ満席で忙しそうな店内に消えていった。そして、本当に5分で戻ってきた。メモ用紙をもっていた。「お待たせしました。Aは結婚をして別な姓になっておりますが、ホテルのなかの『トスティーナ』というカフェに在籍しております」という返答をいただいたのだ。自分で自分にビックリした。何で3年前のサービス係の女性の名札が突如映像として浮き上がり、そしてその名前(姓)が、ありふれた名でもなく珍しい名でもないのに当っていたのだ。末娘を連れて部屋に戻った。シェラトンの朝食券はホテル内の5つのレストランやカフェから自由に選べるようになっていた。最初は、夕食はハンバーガーだったし明日はディズニーランド内でピザやらチキンやらチュロスやらポップコーンを食べることになるので朝ごはんは「飛鳥」で和食をバッチリと補給していく予定であった。しかし、この話をシャラポアにしてみると「何で3年前のサービス係の女性の名前なんか覚えているの?」とニヤニヤ笑いながらも興味を示し、おもしろがって次の日の朝食は「トスティーナ」でとることにした。

b0061413_1341975.jpg 10歳の息子と6歳の末娘の満足気な寝顔をじっくりと鑑賞する。(長女の寝顔も見たかったが見つかったら激怒するお年ごろ)この寝顔が見たくて苦労して連れてきたようなもんなんだよなぁ。鑑賞したら部屋を出て「グランカフェ」の中央部の円形のBARカウンターに一人呑みに行った。MACALLANの12年ものをロックで飲む。3年前の「舞浜」で飲んだスペイン産の赤ワインの風味をいい思い出とともにどこかで覚えているので、今回も何か飲みたくなった。スコッチの12年ものなんて飲みながら、12年前に長女は1歳だったんだよなぁという単純な算数の数式とともにじっくり味わう。外国人客のグループの英語での軽い喧騒をBGMに、けっこう居るお父さんのソロ活動(一人呑み)に何も会話をかわさなくとも妙な共有感をもちつつMACALLANを味わう。マッカランの良さなんてワッカランと思っていたが、12年の年月も味わいに加わってしんみりとした。謎の夜更かし少年が突如「Trick or Treat!」という言葉を叫ぶちびっ子ギャングとして乱入してきて、バーテンダーは笑いながらおつまみ用のチョコレートを一粒だけ渡してお引き取りいただく光景に接した。何だかいい夜だった。 さて、次の日の朝、朝食を取りに「トスティーナ」に5人でゾロゾロと出向いた。すると、たくさんの従業員がいるなかで入り口に立っていたのがまさにその M(旧姓A)さんだったのだ。名前ではピンと来なかったシャラポアもその女性の顔をよく覚えていて駆け寄った。「いらっしゃいませ加藤様」とM(旧姓A)さんは光顔巍巍(こうげんぎぎ)としながら私たち家族に微笑んで、そのまま席に案内してくれた。もともと美人だなぁとは思っていたが、その笑顔には磨きがかかり結婚されて幸せそうにも見えることもあってまぶしいくらい美しかった。「M(旧姓A)さんは私たちのことを覚えているの?」「ええ、忘れていませんよ。私の理想の家族ですから」 そしてM(旧姓A)さんは広い「トスティーナ」のなかを忙しそうにサービスに周りながらも私たちの席の前を通る時には笑顔を差し向けてくれ続けていた。私たちのその日の一日の幸せを保証してくれるかのような、忘れられない美味しい朝食だった。シェラトンをチェックアウトしてからいくつかの「気付き」があった。たくさんの従業員が居るなかで私たちが来場するまでM(旧姓A)さんが入り口に立っての案内係をしていたのは果たして偶然だったのだろうか?実際、私たちが席についてからは別な種類のサービス係をしていた。そして「いらっしゃいませ加藤様」という彼女の言葉。彼女が加藤というありふれた苗字をずっと記憶してくれていたという可能性もゼロではない。ゼロではないけれども、おそらく、M(旧姓A)さんの消息を尋ねた時のいちばん最初に発した「加藤というものですが」としか言っていない私のセリフを「舞浜」の青年従業員は聞き漏らさずにメモをしていたのだろう。そして、シェラトン内部の組織図とか連絡系統がどうなっているかなんて知るよしもないけれども、そのお客さん包囲網を駆使しつつ、5つある朝食会場のなかから私たちが「トスティーナ」をチョイスすることを十分に予測してM(旧姓A)さんを配備させたと考えるのが極めて妥当だろう。何だかシェラトンについて贔屓の引き倒しのようなブログ記事になってしまったが、このような出来事に接すると絶賛せずにはおれない私の気持ちもわかってもらえると思う。こんな奇跡はめったにないとことであろうと思う。ただ彼ら、彼女らは奇跡を起こす準備をしている。しかも笑顔で。


マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2012-11-01 23:59 | 草評


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