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2013年 01月 07日

探偵業

探偵業というものに関して学生の頃には偉大な勘違いをしていた。
ハメットやチャンドラーを読みすぎていたせいもあるし、
松田優作の「探偵物語」(TVドラマの方です)なんかを見すぎていたのかもしれない。
毎日新聞の報道によると最近は興信所、つまりは探偵業が苦しいらしい。

映画やテレビなどでも探偵が登場するという機会が減ったが
周防正行監督作品の『Shall we ダンス?』に出てきた探偵が
仕事内容も浮気調査ということで実態に近いのかもしれない。

探偵の仕事の中心はこの浮気調査であるらしく、
弁護士に離婚訴訟のための証拠を収集して提供する。

かつてこの探偵業の大きな収入源になっていたものに身元調査があった。
結婚や就職の際に興信所を使うというものであった。
(過去形にしていいか、少し迷う)
個人情報保護法というものの、
経済活動におけるたいへんに迷惑な勧誘を取り締まるという意味が主流であったにしろ、
少なくともその法案成立までの個人情報保護方針の精神の柱として
身元調査による差別をなくそうということがあったと思う。

寺院の過去帳というものが身元調査に使われるということもあり、
親戚などを装って探偵が寺院に来る可能性もなきにしもあらず
(実際にそういう報告などは耳にすることがある)
なので「身元調査お断り」は寺院を預かり管理する者の大原則である。

そのような大原則を踏まえつつ、実際にあった話をしたい。

アメリカ合衆国から、自分のルーツを探しに寺院を訪れた日系アメリカ人が何人も居た。
特に2004年は1月にハワイのカウアイ島にあるワイメア本願寺での
新年法話をウクレレ弾き語りでさせていただいたということもあり、
特にこの年にはハワイから新潟県にルーツを持つ日系アメリカ人が
自分自身のルーツの調査のために寺院を訪れられた。

市役所などでは個人情報保護法によって何も知ることはできない。
そして寺院に少しでも手がかりがないかを求めて来る。
流暢な英語とたどたどしい日本語は、どんなに演技力がある探偵でも使うことは
まず不可能であり、切実に自分自身のルーツが知りたい一心であることも分かる。
アメリカでは1970年代に『ルーツ』というアレックス・ヘイリー原作の小説が
発表されテレビドラマ化もされ社会現象ともいえる大反響が巻き起こったこともある。
黒人と日系人はその歴史も意味も異なるが、たとえば定年後に自分のルーツを知りたいと
思う気持ちの強さには変わりはない。

ただ、寺院に来た彼ら、彼女らのもつ情報は極めて少なく
祖父・祖母の名前ぐらいであり、その苗字も
「日本人の苗字として珍しくないもの」ばかりであった。

このような問題があった時に、どう対処すればいいのか?
という問題を考えざるを得なくなった。

山口県の周防大島町には 日本ハワイ移民資料館
という資料館があって、そこではその地域における第1回官約移民船が
ハワイに到着した明治18年(1885年)以来の資料があり、そういう場合においての
相談にも「歴史の資料を提供する」という形での協力が出来る形になっているようだが、
そのような資料館はないところの方が多いのだ。

市役所の福祉課(この問題に対応する部署は各市役所、役場で異なる)に
直接相談に行くと、こういう目的で市役所を訪れる方は年に10人前後いらっしゃる
ということであったが、個人情報保護法等により残念ながら何もしてあげられないという。

手ぶらで帰すわけにはいかないという思いと、
自分の祖先の故郷にあたる土地が冷たいと思われるのが嫌で
市役所の「市報」を作っている広報室に行って
「こういう人が訪れましたが、手がかりをお持ちの方は善良寺に」
という小さな記事を掲載してもらうことにして、そのことは快く了承され
実際にその記事が載った市報は数週間後に発行された。
ただ、半ば予想していたこととはいえ有力な情報提供はほとんどなかった。

あとは車にのせて
「この山はあなたの祖先が見上げていたはずです、この海はあなたの祖先も
 訪れたはずです」
などと言うことが、できることの精一杯だった。

他人の身元を暴くことは許されるべきではないが、
そういうことと自分自身のことを調べるということの間に
何らかの線引ができたらいいのになぁと思った。

マーヒー加藤









 
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by kaneniwa | 2013-01-07 23:09 | 草評


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