2013年 03月 27日
迷信というもの、 ことに「呪い」というものを簡単に信じこんではいけない浄土真宗の僧侶であるが スポーツでの「ジンクス」ということに関しては 妙味を感じて関心をもっている。 ちょっと古い話で熱狂的な阪神ファンしか知らないことであるが 甲子園で新庄剛志がお立ち台(インタビュー)に立った時に 「明日も必ず勝ちます」 と言った翌日は必ず負けるというジンクスがあった。 新庄剛志は今どこで何をしているかなぁ?と思うとともに、 「あんな陽性の呪いは珍しかったなぁ」 と懐かしく思う。 最近のスポーツ界でサッカーファンのみならずかなり有名になったジンクスが 「前田の呪い」(デスゴール)というものである。 つまりJ1のジュビロ磐田の前田遼一選手がリーグ戦でシーズン最初のゴールを決めた相手は J2に降格するという内容のジンクスである。 なんせ、2007年のヴァンフォーレ甲府に始まり、 それから毎年、東京ヴェルディ、ジェフユナイテッド千葉、京都サンガ、モンテディオ山形と 5年連続で前田選手がシーズン初ゴールを決めた相手チームのクラブの降格が続いていた。 ただ、昨年のシーズン終盤まで この「前田の呪い」を信じていたり意識していたサッカーファンは少なかった。 なんせ2012年シーズンの初ゴールの相手は 遠藤保仁や 今野泰幸という現在の日本代表の心臓部を務める選手や 加地亮や明神智和といった元日本代表選手を擁する名門にしてJ1の優勝候補の常連であった ガンバ大阪であったからだ。 「まさかガンバ大阪が降格することはないだろう」 と、ガンバや大阪のサッカーファンのみならず思っていたところ、 前年まで3、2、3位と続いていた好成績が一転して残留争いに巻き込まれ、 しかもよりによって最終節でジュビロ磐田との対戦に敗れれば降格という事態になった。 さらにその試合、前田選手の1得点1アシストを含む2-1のスコアで磐田が勝利し、 ガンバ大阪は降格が決定したところから「前田の呪い」は大きくクローズアップされることになる。 さらに2013年の今シーズンのJ1開幕戦で名古屋グランパスの 国際的にもサッカー界の有名人である ドラガン・ストイコビッチ監督が引き分けとなった試合終了後の会見で 「前田に得点を許さなくて本当によかった。これで今年の名古屋はセーフだ」 と言ったことで「前田の呪い」はさらに有名なジンクスとなった。 このジンクスに関する報道を不快に思っている人もいる。 まずは前田遼一選手本人がそうである。 (自身がそう言っていた) ただでさえFW(フォワード)のワントップに入ることが多く 相手のマークをかいくぐって得点する役割のポディション。 ましてサッカーほど1点の重みが大きいボールゲームはなく、 さらにチームのエースFWのシーズン初ゴールとなるとその重みは増す。 マークが必要以上に厳しくなってしまっては商売にならない。 そしてジュビロ磐田のジェネラル・マネージャーである服部健二さんも 「選手のパフォーマンスに影響が出る可能性があるのでこの件に関する報道は控えてほしい」 と報道の自粛を要請した。 その自粛要請に逆らうようであるけれども、このジンクスには何か理由があるように思う。 たとえば、前田選手に得点を許すパターンの守備陣形や連携に問題があり、 それがシーズンを通じての大きな課題となるようなことである。 そしてその課題は問題となって負の連鎖反応を呼んでしまう。 ただ、ジュビロ磐田のファンとしては心中複雑でありつつも 「相手を気落ちさせる」とか「相手を沈める」ということでの 前田ゴールの価値を高めるジンクスとしてそれを意識する人もいるだろう。 前田が日本代表に入っていて、その得点を待望するということになる国際試合、 ことにワールドカップの出場が決定するかもしれないという試合となれば、 私も少しジュビロ磐田のファンの気持ちに近い気持ちになって 「前田の呪い」に期待するということが起こる。 さて、あんまり呪いだとかデスゴールとかばかり言うのは失礼とは思いつつ、 先ほど終わった 「勝つか引き分けで日本が世界でいちばん早くワールドカップ出場決定試合」 という意味をもった最終予選のヨルダン戦で、 前田の呪いの負の連鎖反応の一つを感じてしまったからだ。 つまり「決めたらワールドカップ出場決定ゴール」となる可能性が非常に高かった 遠藤保仁選手の蹴ったPK(ペナルティキック)が入らなかったのだ。 日本代表の心臓部であり中核でありベテランである遠藤選手に、 (ガンバ大阪がJ1から降格したことにより)J2の移動を含めた 強行日程やグランドコンディションといった環境が影響を及ぼしていないかといえば、 それはあるとしか言えないからだ。 そして結果として1−2で日本は負けてワールドカップ出場決定は 6月4日に日本で行われるオーストラリア戦を待つこととなった。 この試合、ヨルダンの選手やヨルダンのマスコミがどれだけ意識していたかは定かではないが、 もしも前田遼一選手にゴールを許して敗戦するという展開があったとして (そうであれば日本にとっては大変に喜ぶべきことであるが) ヨルダンはオーストラリアやオマーンとのワールドカップ最終予選での 出場枠争いに大きく遅れをとることとなっていた。 最後に、これを考えていたのは私だけではないと思って書きたい。 負の連鎖はジンクスであろうと意識すればするほどそこに陥っていくので、 次のようなことが起こらなくてよかったと思っている。 その確率はとても低いものの、前田遼一の2013年の初ゴールが 自陣へのオウンゴールでなくて本当によかった。 マーヒー加藤
by kaneniwa
| 2013-03-27 02:24
| 草評
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