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2013年 04月 18日

名曲草鑑賞(36) ビル・エバンス(Bill Evans)のワルツ・フォー・デビイ(Waltz For Debby)

b0061413_0182755.jpg 散る桜 残る桜も 散る桜(良寛) 桜前線は東北から北海道に北上中でしょうが、こちらは桜が散る季節になりました。今回紹介させていただくのはビル・エバンス(Bill Evans)の『ワルツ・フォー・デビイ(Waltz For Debby)』というライブアルバムで、これは私が推奨するまでもなくJAZZの名盤中の名盤と言われているものです。学生時代にジャズ喫茶というところでアルバイトをしていましたが、お客さんのリクエストの多さでいってもベスト7には入るもので、もう何度聴いたか、あるいは聴くつもりがなくても耳に入ってきたかわかりません。私はこの演奏を耳にする時、ある事実をイメージするかしないかで聞こえ方がまったく違うのです。それは、その事実の方を先に書いてしまうならば「1961年6月25日の夜、ニューヨークのヴィレッジヴァンガード(Village Vanguard)という前衛絵画のギャラリーを前身とするそんなに大きくないJAZZクラブで後世まで語り継がれるライブの録音を残して、伝説のベーシストのスコット・ラファロ(Scott LaFaro)はその11日後の7月6日に、ニューヨーク州ジェニヴァ近郊のフリントで交通事故により26歳の若さで亡くなってしまう」ということです。私がこの世に生まれてくる約2年前の出来事ですが、この事実を感じるか感じないかで音の聞こえ方が違います。そして、最初はそのことをまったく意識せずにただビル・エバンスのピアノを聴きたいと思いつつも、そこに寄り添うようにベースを奏でるスコット・ラファロの存在はすぐに感じざるを得なくなり、ビル・エバンスのピアノの音からも自分の音楽にとっての稀有の相棒を見出すことが出来た喜びのようなものを感知する時、胸がいっぱいになってきます。静かなバラッドが多いピアノ・トリオ(ピアノ・ドラムス・ベース)のライブ演奏ですが、しっかりとスイングしています。そのスイング感は桜の花びらがゆっくりと舞い降りてくるような光景を私には連想させます。

b0061413_0184142.jpg 桜の写真を撮るのは難しいですね。光の加減、逆光か順光か、背景は何かでまったく違った映り方をして、それはピンクにも見え、パープルにも見え、アイボリーにもベージュにもホワイトにも見え、それはこのジャケット写真にも少し似ているような気がしています。1991年の秋に私はニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあるヴィレッジヴァンガードを訪れることができました。初代オーナーのマックス・ゴードンさんが亡くなられた後に奥さんのロレイン・ゴードンが経営を引き継いで1年ぐらいの時でしたから、新装のための改装が行われたばかりで真新しい店構えでした。私が訪れた夜はカナダのホーン・セクショングループが演奏をしていていました。(ちゃんこ鍋を楽しみに相撲部屋を見学に行ったらカレーライスとかオムライスが出てきたような…)でも、お店のスペースと間取りは変わっていないそうで、やっぱり『ワルツ・フォー・デビイ』に入っている音のとおり、30人ぐらいの客がまばらな拍手をバンドにおくっていました。何でもバーブラ・ストライサンド(Barbra Streisand)が演った時でも客は123人ということで、その場所の大きさは、ずっとそのスペースで発せられた音(50年前の酔客の話し声、店員が皿を洗う音なんかも含めて)を聴き続けてきた成果で、思った通りの大きさだったのです。1961年の6月25日に音を出していた方々、ほとんどがお亡くなりになっていると思われます。 散る桜 残る桜も 散る桜 


マーヒー加藤

※名曲草鑑賞の整理をしていたら(27)が二つあったので(35)を飛ばして(36)とします。
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by kaneniwa | 2013-04-18 00:18 | 草評


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