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2013年 04月 22日

草煩悩(4) HOHNER(ホーナー)のMARINEBAND(マリンバンド)

草煩悩(4) HOHNER(ホーナー)のMARINEBAND(マリンバンド)_b0061413_450247.jpg スーパースターの定義とは何か?実際のスーパースターに訊いてみよう。このたび国民栄誉賞を受賞される長嶋茂雄氏の定義は「期待通りのプレーをするのがスターで期待を超えるプレーをするのがスーパースターである」と、明確でわかりやすい。さすがはかつてクイズ番組で「サバは漢字で魚へんに何と書く?」という問題に対して恐るべき反射神経でボタンを押して「ブルー!」という、正解でありつつ期待を超えた答えを導き出したお方である。さて、スーパーマンの定義の方も「1,弾丸よりも速く2、力は機関車よりも強く3,高いビルディングもひとっ飛び!」と明快である。ウサイン・ボルトの超人的速さに接したら誰しも彼をスーパースターとして認めるだろう。同じように、圧倒的なパワーを感じさせてくれる人もスーパースターである。しかし、3番目の「高いビルディングもひとっ飛び!」に関しては、いかに全盛期のセルゲイ・ブブカ選手であろうとも2階建ての低いビルディングが精一杯であると思うので、私のなかでは「高い理論もひとっ飛び!」と置き換えさせてもらっている。 ジョン・レノンというスーパースターがビートルズのメジャーデビュー曲である「LOVE ME DO」の、そのイントロで出していた音が、ずっと何の音であるかさえわからなかった。やがて常識的にそれはハーモニカの音であると分かるが「ただのハーモニカを吹いている音ではない」ということもわかってきた。「LOVE ME DO」のキー(コード)はGであるけれども、Gのブルースハープ(10穴ハーモニカ)を買ってきて懸命に「吹いても」まったくあの音は出なかった。懸命になればなるほど出ない。やがて「ハーモニカを吹く」という言い回しがあって、その日本語の常識が邪魔をしていて「吸っているのだ!」(全部の音が吸音ではなく吹音もあるが、中心は吸音)とわかり、サウンドの秘密にかなり近づいた。ただ「キーがGの曲にCのハーモニカの吸音を中心に無理やり音を合わせていき、その無理やり感というものがブルーズフィーリングを醸し出す肝であった」ということを知るまでにかなりの時間を費やしてしまった。まわり道であり迷い道であった。今の時代はJAZZはもちろんロックやブルーズなんかもかなり理論化されて語られることもあるので、いちおう音楽理論としても「セカンドポディション」とか「サードポディション」というような、野球の内野手のような名称の理論でも語られるのであるが、これを初めて知った時には「高い理論もひとっ飛び!」と思った。というわけで、どうせなら「LOVE ME DO」のイントロで使われているのとまったく同じ10穴ハーモニカであるHOHNERのMARINEBANDを手にすることになった。ビートルズ当時からすでに定番で2013年現在もずっと現行品。身近なところで使っている数少ないドイツ製品。この骨太の存在感ある音が出るハーモニカでGを基調とする曲でCのキーのものを使って吸い音を中心に無理やり合わせていくと「ああ、ずっと出したい音はこういう音だった」という感慨があった。その感慨があるので、まわり道も迷い道も、ただ単に合理的近道を行くのではなくて、近道を見つけるための間抜けな長距離の歩みではあったけれども何だかいい旅であった。 さて、ビートルズのデビュー曲からの後追いであるけれども「Gの曲にCのハーモニカの吸い音で合わせていく」ということはジョン・レノンが始めたわけではなくアメリカのブルーズミュージックからの影響であったはずだが、その後に次々と「高い音楽理論もひとっ飛び!」であり「期待に応えるのではなく期待以上のものを次々と創りだしていく」という存在になっていくジョン・レノンがデビュー曲のイントロで響かせたのが、マリンバンドの吸い音であった。

マーヒー加藤

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by kaneniwa | 2013-04-22 05:49 | 物草


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