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草仏教ブログ

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2013年 05月 27日

二刀流

松坂大輔のように打撃がいいというどころか強打者といっていいレベルの投手が
横浜高校から西武ライオンズというDH(指名打者)制を採用する
パ・リーグの球団から指名された時に、
その打撃が見られないということは残念であった。
松坂大輔本人も打つことが大好きであり、
確か入団の時の契約条件として
「週に1回は打撃練習をさせてくれること」
ということが盛り込まれていたと記憶している。

投手も打席に入るシステムであるセ・リーグの球団に入団していれば、
少なくとも自身が投げている試合はその打撃も見ることができていたのだ。

実際に2000年8月7日のオリックス戦では、9回2死満塁の場面で代打として登場し、
見事にセンター前に2点タイムリーヒットを打っているし、
2002年の日本シリーズでは伊原監督のもと9番や8番ではなく
先発投手として7番バッターとして起用されているし、
2006年6月9日のセ・パ交流戦の阪神タイガース戦では
ダーウィン・クビアン投手が投げ込んだ150km/hの速球を
2ランホームラン。
見事な打撃であった。

西武ライオンズからメジャーリーグに移籍する時も
投手が打席に入るナショナルリーグではなく
やはりDH制のもと、基本的には投手は打席には入らない
アメリカンリーグのボストン・レッドソックスに入る。
これは巨額な金が動いたこともあって
本人の意思というよりは代理人の意向ではあったので、
もしかしたら本人はナショナルリーグの球団に属したかったのかとも思う。

2007年の10月27日、
ワールドシリーズ第3戦・対ロッキーズ戦の3回表2死満塁の場面で
ジョシュ・フォッグの初球を叩き、メジャーリーグ移籍後初ヒットを放って2打点。
アメリカの取材陣が
「松阪という投手はバッティングがいいのか?」
としきりに日本から来ていた取材陣に問い合わせていたけれども
日本の野球ファンなら松阪のバッティングがいいのは常識であった。
しかし、パ・リーグとアメリカンリーグで、その機会があまりに少ないことの
残念さはあった。

34ホーマーをかっ飛ばした金田正一の現役時代こそ薄っすらとした記憶しかないが、
(金田正一の引退試合だけうっすらと覚えている)
阪神の江夏豊、巨人の堀内恒夫、中日の星野仙一など、セ・リーグの各球団の
エース級投手のバッティングの良さを見るのは、なかなかワクワクした。

それから後の時代にしても、
たとえば江川卓などは打つ気を見せなかった場面も多かったのであるが
法政大学時代には首位打者争いにも顔を出して、確か僅差で2位になったことが
あった(と記憶しているのだが…)というほどバッティングが良かった。

桑田真澄は、フィールディング(投手の野手としての守備)が大変に優れた投手で
あり、バッティングも野手的に良かったのであるが
打った後の走塁とスライディングまでお手本的に優れていた。

広島カープ(のちに巨人に移籍)の川口和久投手が、
左投げ投手なので左バッターであるのは当然だと思って見ていたが、
サウスポー同士の投げ合いの試合で右打席に入った時にはビックリした。
何と、当時の広島カープは高橋慶彦と正田耕三という
二人のスイッチヒッター(両打)を擁していると思っていて、
スタメンにスイッチヒッターが二人というだけもスゴイと思っていたが、
何と川口が投げる試合はスタメンにスイッチヒッターがが三人!

阪急ブレーブスの山口高志。
多くの名バッターに「山口高志のストレートがいちばん速い!」と言わしめ、
「プロ野球豪速球列伝」などの話には必ず名前が出てくるような伝説の投手。
太く短い現役生活8年の間、今と違って交流戦もなかったし、
滅多に公式戦のバッターボックスに立ったことはなかったけれども、
新人の年の1975年に日本シリーズの広島市民球場でのバッティングが凄かった。
相手投手は確か当時の広島カープの大エース外木場義郎であったと記憶しているが、
山口高志は170センチというプロ野球選手、特に投手としては小柄な体を
いっぱいいっぱいに使っての投球と同様に、全力のフルスィングで
左中間のフェンスに弾丸ライナーを当てる二塁打を放ったバッティングは見事だった。

こうして見ると、今の時期のようなセパ交流戦の最中か日本シリーズ中に
セ・リーグの本拠地球場で試合をやる時以外に、パ・リーグの投手は
いかに打撃の能力が優れていてたとしても打席に立つ機会はない。
(オールスターゲームで仰木監督がファンサービスで野茂英雄に代打を
 出さずにそのまま打席に送ったということはあったなぁ)

何となく、DH制に反対であるような趣旨の文章になったような気がするが、
そんなことはない。
打撃のいい投手の打撃を見ることと、鈍足・拙守でセ・リーグでは代打の切り札でしかない
選手の豪快なバッティングを見ることができることを秤にかけると、
DH制度があった方がいい。
アマチュア野球でも、国際大会などはほとんどがDH制度を導入しているのだから、
高校野球や大学野球でもDH制を導入した方がいいと思っている。
高校野球などでよくある「エースで4番」というような存在が居れば、
DH制のもとでその特権を利用しないスタメンにするという選択肢もあるのだ。

むしろ言いたいことは、最近のプロ野球のセ・リーグでは
せっかく投手が打席に立つシステムであるのに、
バント練習以外はほとんど打撃の練習をしないのか
「投手で強打者」と言えるような存在がほとんど見当たらないのが
とてもおもしろくない。
「敬遠」といえばかつては相手の4番バッターを文字通りに
「敬って遠ざける」という行為であったが、
今のセ・リーグの野球では8番バッターを敬遠して
9番の投手から確実にアウトを取ろうという戦術が多すぎる。
これはまったくおもしろくない。
結論的な意見とすれば、セ・リーグの投手は「せっかく打席に立てる」という、
打撃が好きなパ・リーグやメジャーのアメリカンリーグの投手にとっては
うらやましい環境にいるので、もっとバント以外の打撃練習に力を入れて欲しいということになる。

さて、このブログでの論評はもちろん北海道日本ハムファイターズで
投手と打者(野手)としての二刀流に挑んでいる大谷翔平を意識してのものである。
当初は野手出身の野球評論家は野手に専念して欲しいと願い、
投手出身の野球評論家は「157キロ以上の速球を投げる投手なんて世界に数人しかいない」
ということもあって投手への専念を望んでいる状況が続いていると思う。
私は二刀流をやればいいさぁ、と思う。
20歳前なんだから、自分が専念することなど決められなくて当たり前であり、
どっちもすでになかなか見せてくれるレベルにあるではないか。
それに、アメリカ合衆国にはボー・ジャクソンという
ものすごい二刀流がいて、メジャーリーグのシーズンが終わると
すぐにアメフトのランニングバックのスーパースターとして活躍し、
MLBのオールスターにもNFLのオールスターにも、
両方出場しちゃった。
それに比べれば、同じ野球なんだから。

元ロッテオリオンズの愛甲猛は、夏の甲子園の優勝投手であったこともあり、
当初は投手としてプロ入りしたこともあって打者(野手)としての転向が遅れた。

もっともっと古い話では何と言っても若い投手としてもそこそこの成績をおさめていた
あのベーブ・ルースで、もしも投手に見切りをつけていなかったら野球の歴史は
確実に変わっていた。

あの天才・長嶋茂雄さんにして
「生まれ変わったら何になりたいですか?」
「うーん、ピッチャー!」
と答えさせるほど、投手というのは魅力的な野球の花形だ。

だから、大谷翔平ほどの素質があれば投手としての思い入れは捨てられないと思う。
ただ、そこに「打撃もすごいよ」という特性も常に有していて欲しいと思う。
メジャーリーグに行くという時には、これは打者としてのウリも含めて
代理人なんかが奔走して主体的になっちゃうような世界だけれども
「ナショナル・リーグの球団じゃなきゃ嫌だ」
ということぐらいは言って欲しいと思う。

さて、最後になるけれども身近なところで私は応援したい
二刀流を志す若者と出会った。

法事で知り合った中学3年生の男子であるが、
彼は柔道部で熱心に柔道に取り組んでいる。
そして、お兄ちゃんがベースをやっている影響もあって
ロックバンドのギタリストでもある。
彼が志す二刀流は

「日本武道館で行われる柔道の大会に出場し、
 コンサート会場としての日本武道館のステージにも
 ギタリストとして立つ」


というものであり、その志を私は大いに気に入った。
誰もやったことがないようなことに挑戦する若者を見ることは、
実に気持ちがいい。


マーヒー加藤

by kaneniwa | 2013-05-27 15:32 | 草評


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