2013年 06月 02日

名曲草鑑賞(38)冨所正一の 「お前まだ春らかや」(おめぇまだはるらかや)

一週間前、日本テレビ系列の秋田放送局のドキュメンタリー番組で
「米を作っては飯が食えない」
という、実にメッセージ色が強いフォークソングを聴いた。
メロディなどはうろ覚えなのだが、一聴して名曲だと思った。

秋田県の羽後町に暮らす阿部養助さんの「新曲」であった。
今から35年前、阿部養助さんは農家の仲間とフォークバンド「かど石」を結成し、
米蔵をスタジオ代わりに使いつつ農家のプライドをこめた「若き百姓よ」で
アナログ盤レコードでデビューする。

かつては収穫祭や田植えの打ち上げなどのお祝い事に引っ張りだこであったが、
その後の35年、農家にとっては過酷な状況が続く。
そしてドキュメンタリーの中心である「かど石」の久しぶりのコンサートのために
新曲を作っている最中にもテレビからはTPP交渉のニュースが流れた。
そのさまざまな背景のなかで
「米を作っては飯が食えない」
は、力強いアコーステックギターのサウンドとともに実に痛烈なメッセージであった。

同じ日に「週刊アコギ倶楽部」というFM新潟のラジオ番組から、
冨所正一の「お前まだ春らかや」(おめぇまだはるらかや)
という歌が流れ、それをしんみりと聴いた。
これは冨所正一の死後すぐに出されたアナログLPをカセットテープにコピーしていたものが
あった。
今はどこにあるのか、あるいはないのか、さっぱりわからないが、
忘れることがない歌である。
知っている人など私と、その貴重なアナログLPを持っていた中学生時代の友人の他に
あまり知らない歌である。

冨所正一(とみどころ しょういち 1951年 - 1977年)さんは、
新潟県見附市出身のシンガーソングライターだった。

新潟県立長岡農業高等学校卒業後、働きながら曲を作る。
地元のNHK新潟放送局の番組内でも、しばしば歌を披露していた。
地元の方言の多い素朴な詩の中に、やはり強烈なメッセージを含む曲が多い。

1977年のお彼岸の3月20日、新潟県三条市内を流れる
信濃川の三条大橋から投身自殺を図り、同年5月2日に
三条大橋から約6キロメートル下流で遺体が発見された。
25歳だった。

たった今、冨所さんが亡くなられた場所が三条大橋であったことを知った。
冨所さんの死から21年後に、
私たちはその三条大橋のすぐ近くで4年間暮らすこととなり、
長女と長男も生まれてからそこで育った。

この曲にふれたなら、いつでもまだ春である。

マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2013-06-02 22:48 | 草評


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