2013年 11月 17日

名曲草鑑賞(40) バードランドの子守唄(Lullaby of Birdland)

b0061413_14301018.jpg 今回はこのブログにおいてとてもめずらしい新譜紹介というものも兼ねている。新譜といっても8月にはリリースされていたと思うが、この『Hand Picked』という8年ぶりになるらしいアール・クルー(Earl Klugh)のニューアルバム(CD)を先月見かけ、思わず購入した。JAZZのジャンルのコーナーに置かれている新譜というものを購入したのは実に久しぶりだ。(旧譜のおっかけは地味だがしていたけど)もしかしたら20年ぶりぐらいになるかもしれない。アール・クルーという人(紅茶のアールグレイのアールと同じ綴りで人名別のAのところをいくら探しても見つからないのでご注意を)を久しぶりに見かけ、まずはジャケットを見て「うわっ、30年前と変わらない…ていうか若返っているぞ!」と驚いた。そして音を出してみる。相変わらずウォームであります、クールであります。決してコールドにならずホットにならず、それでいてホットするのであります。アール・クルーのようにジャンルレスな人に対してジャンル分けをするのはあまり意味がないことかもしれないけれど、JAZZの分野、ことさら「フュージョン」(FUSION)と言われる分野の巨匠である。だた20歳代前半から活躍していたので、50歳で9月生まれの私よりちょうど10歳年上であるだけであった。私が15歳の頃には25歳の頃のアール・クルーの演奏にすでに魅了されていたということになる。フュージョン(といってもその分野は果てしなく広いが…)という分野のJAZZが一世を風靡(ふうび)していた1970年代の、たとえば「Captain Caribe」(1976年の『Living inside Your Love』というアルバムのなかに入っている曲)などは「いかにも当時のフュージョンをし過ぎている」というような、今の時代から見れば「新しさを追求した時代全体の古さ」というものを感じてしまう曲もあるけれども、ほとんどの曲は今でも古さというものを感じない。演奏には常にクラシックギターを使用するというナイロン弦一筋のナイロンドアホウというスタンスの確かさもあるだろうが、古さを感じないのは私だけではないようだ。その証拠に、民放のFM局の番組テーマ曲やBGMやジングルに、あきれるぐらいアール・クルーの演奏が使われている。ラジオだけではない。天気予報やクロージングテーマで「ルックルックこんにちは」の時代から、テレビのスピーカーからも実に多くアール・クルーの演奏を耳にした。それだけ耳に心地よく何度耳にしても不快感がない曲が多く『Finger Paintings』という1977年発表のアルバムに入っている「Dance with Me」という曲など、オリジナルのオーリアンズ(Orleans)よりも無意識のうちにもアール・クルーのナイロン弦での演奏で耳にしてきたと思う。これをBGMに民放FM局の女性パーソナリティが「それじゃまた来週お会いしましょう、See You next week!」なんて言うのだ。 このアール・クルーの久しぶりの新譜は、私としても「久しぶりに買った新譜」ということになる。選曲は「なんでもあり」だ。選曲された曲の共通点を言うなら「アール・クルー本人がとても深い思い入れのある曲ばかり」ということだけ。ウクレレの名手でジェイク・シマブクロとの共演も収録されている。その共演の楽曲は何とイーグルスの「ホテルカリフォルニア」である。最初の部分はジェイク・シマブクロのウクレレ・ソロで始まることもあって「ホテルカリフォルニア」であると瞬間的には気がつかない。そこにアール・クルーがからんでくると、もう舞台はハワイなんだかカリフォルニアなんだかデトロイト(アール・クルーの出身地)なんだかニューヨークなんだかさっぱりわからなくなってくるが、後口はやはり不思議といいのである。そして選曲のなか、「バードランドの子守唄(Lullaby of Birdland)」というJAZZのスタンダード曲をナイロン弦のギター一本でやっている(演奏時間2分29秒)ものをじっくりと聴いてみる。この楽曲にして漂ってくる酒臭さはゼロに近い。麻薬や薬物などまったく連想さえしない。しかし、無味無臭かといえばそうではなく、ネルドリップした時のコーヒーの香りとか紅茶の風味などは漂ってくる気配がありありとする。これを聴いていて、ふと思った。私はナイロン弦の音が大好きであるが、それはボサ・ノヴァを知る以前からアール・クルーを知っていたせいではないだろうか?と。聞き慣れた楽曲が聞き慣れたナイロン弦で奏でられ、久しぶりに一音一音にじんわりと温められた気がする。私も長女が生まれて間もない頃に、初めて自分のナイロン弦のギターを手に入れた。(タカミネ製です)それを使って世に出したものは これぐらい だろうか。しかもその時、夜中だったか明け方だったか、1弦のナイロン弦を誤って切ってしまい、ナイロン弦の買い置きもなく1弦だけフォークギターの鉄弦をはったものを使って収録したインチキナイロン弦である。

マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2013-11-17 16:05 | 草評


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