2013年 11月 21日
というわけで、京都の錦市場のなかにある「大安」についてほめるという趣旨になったブログ記事の続きである。不定期連載と言いつつも、一日空けて連続投稿のようになった。今回も、どちらかと言うと脇道から入っていく形をとる。大安のお客さんの9割ぐらいは名物の「焼き牡蠣」(大安をほめる時にこのメニューに言及しないわけにはいかないがこの不定期連載の中盤か終盤にとっておく)を注文していると思う。ビールにものすごく合うし、日本酒や焼酎それから大安さんに置いてある白ワインにも合うからだ。ちなみに「生牡蠣にシャブリのような辛口白ワインが合う」というのは本当かなぁ?と、ちょっと思う。「シャブリの産地以外では生牡蠣好きのフランス人もワイン以外の、たとえばウォッカなどを飲む」という説も聞いたことがあるが、私も生牡蠣には白ワインとの相性の良さを全く感じない嗜好性をもつ。ただ、焼き牡蠣となるとガラッと変わってくる。とにかく、お客さんの9割は「まずは焼き牡蠣と生ビール!」という感じだと思う。飲み物以外は焼き牡蠣のみの注文のお客さんというのもけっこういる。そして、その日のいい状態の季節の刺し身の単品などを追加注文して好きな種類の酒を楽しんでいるお客さんが多いと思う。なので、その日の推奨メニューの端に「加茂茄子のあんかけ」というメニューがあっても、そんなには注文している人は周囲にはいない。この写真のデジカメデータを見れば日付は今年の5月7日。加茂茄子の旬は何といっても真夏なのだが、この日付のあたり「出始め」とか「初物」という冠が付く時期ではあったと思う。大好物の焼き牡蠣をはじめとする海産物に行く前に「有意義なタメを作ってから牡蠣を賞味するためにアペリティフ(食前酒)としての生ビールのお供に、まずはこれを行こう!」という発想があったのだろうと思う。まあ、そんなに細かいことは覚えていないけれども加茂茄子を食べた。その美味さに唸ってしまった。まず、乗っかっている大根おろしが丁寧に細かくおろされていてほどよいのは「焼き魚や牡蠣ポン酢といったメニューへの付け合せ提供で慣れている」ということがあるかもしれない。さらに薄味といっても塩分が控えめなだけで決して味が薄いわけではなく特に昆布の成分の旨みと香りをたっぷりと内包した葛出汁にくるんだこの味付けがいい。そして加茂茄子本体も、もしかしたら時期的にはハウス栽培ものかもしれないけれども「茄子ってこんなに美味しかったか?」と思わせてくれるほどのもの。そしてその豊穣のだし汁のなかを優雅に浮きつ沈みつするザ・九条ねぎ。「何で?貝類を中心とした海産物問屋さんの居酒屋でなぜ?」と思いつつ、その理由は外の風景を見つめつつ、わかった。ここは市場のなかなのだ。昆布を扱う乾物問屋も、京野菜を扱う八百屋さんもご近所なのだ。牡蠣以外の刺し身などのサイドメニューをここで食べた時に「さすが大安、海産物問屋のプライドで牡蠣以外もとてもいいものを出している」と心底感じたのだが、この加茂茄子には「わてら市場のなかで商売しているプライドで野菜料理かてそこそこのものを出さしてもろうてます」という声を聞いた気がした。 マーヒー加藤
by kaneniwa
| 2013-11-21 01:24
| 七草
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