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2013年 12月 14日

『歎異抄』千本ノック(6) 凡夫(1)

 『歎異抄』千本ノック(6) 凡夫(1)_b0061413_23115598.jpg シャラポア(妻・日本人)から「料理の味付けが早い」とよく言われる。苦情ではなくてお褒めをいただいているという形だ。たとえば寺院でのお斎(おとき・食事)で70人分の煮物を大鍋で作る時でも味付けを頼まれて「秒殺」(1分以内での勝負)で決めた。何人かに味見をしてもらって一発OKが出たのでそれで良かった。そういうことに慣れてきたということもあるが、逆に、これが秒殺ではなくて長時間迷いに迷って「ああでもない、こうでもない」とやっていては妙ちくりんなものが出来上がってしまうということが凡夫なりに経験してきたことから少しはわかってきたからだと思っている。現在の凡夫であることの自覚をもとに主に学生時代に作ってきた「凡夫カレー」を振り返ることは実に辛い面もあることではあるが『歎異抄』を読んでいくうえで避けることができない「凡夫」という言葉を読み解くうえで、その味を思い出してみなければならないと思った。 学生時代の自炊の中核にカレーライスがあった。一度作っておけば数日間はそれで過ごせるということもあるし、もともとカレーが好物であるということもあった。ちなみに神保町のエチオピアのカレーもレトルト商品として売っているような現在とは違ってレトルトのカレーは大塚食品のボンカレーの他に数種類しかなく、今は定番商品のひとつになっている江崎グリコのLEEさえも学生時代の終了間際に発売されたものであったと記憶している。そこで市販のルーを使ったりエスビーの赤缶などの調合スパイスを中心に自作カレーの製作に入るわけであるが、これがいったいどこから得てきた知識なのか単品のスパイスをよくわからないままにクミンシード、チリパウダー、カルダモン、コリアンダー、ナツメグ、クローブなどを買ってきて凡夫の調合をする。味見をしては「うーんクミンシードをもうちょっと足した方がいいかなぁ?」などと考えていた自分を恥ずかしく思い出す。何がクミンシードをもうちょっと…なのだろうか。スパイス類についてブラックペッパーやシナモンぐらいならばそのスパイスを加えた時の味の変化に少しは見当をつけることができたであろうが、使い慣れないどころかそのスパイス単体の味すら把握していない日本人学生が、確固たるレシピさえなくせっせとせっせと扱い方をよく知らないスパイス類を調合していた。『ドラえもん』でジャイアンが作る鍋料理に「あとはここに大福とたくあんを入れて完成だ」などと言うシーンで末娘が爆笑していたが、私はかつての自分の凡夫性を思い出すにつけ笑えなかった。私のやってきたことの方向性はジャイアンと五十歩百歩であった。「インスタントコーヒーを入れるといいとかどこかで聞いたなぁ…さらにココアパウダーを隠し味に使っている名店があったとかなかったとか…」ということをやってきたのであった。この私の「凡夫カレー」の根底にある心の闇が「手間暇と労力さえかければいいものが出来るに違いない」という自力への信仰であった。それも、インドには行ったことはあったが別にインド料理の調理修行をしたわけでもない自分の実に頼りない自力への信仰。そんな自分でさえも「努力さえすれば」という妄想が凡夫カレーの製作への意欲をかき立てたのであった。ああ、そんな私が「努力さえすれば」という発想で車の設計をしたりパイロットになったり、権力をもって原子力などに関わらなくて本当によかった。

マーヒー加藤

by kaneniwa | 2013-12-14 00:17 | 『歎異抄』千本ノック


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