2014年 02月 05日

五味康祐の文庫本の記述にビックリしたなぁ

中公文庫から出ている五味康祐の『いい音いい音楽』という本を手にとった。
819円プラス税金、ということは860円。
写真付きではなく文章だけで264ページの文庫本もけっこうな値段がするんだなぁと感じつつ、
五味康祐の絶筆となった読売新聞大阪版での連載
「一刀斎オーディオを語る」(昭和53年3月3日〜昭和54年11月17日)を中心に
神戸新聞や『潮』や『別冊FMファン』などに寄稿したエッセイがまとめられた文庫本だ。

音楽愛好家のなかでもオーディオ・マニアという人の数は激減して、
アップルのiPodなどの携帯オーディオを除いて
オーディオ専用機というものは消費者物価指数のサンプルにも取り入れなれなくなって久しい。
実際に音楽の鑑賞にしても車のなかとスマートフォンも含む携帯オーディオと、
パソコンで聴いている人がほとんどであるということになった。

『いい音いい音楽』という本の基盤となっている読売新聞大阪版の連載は
1970年代の後半という、コンパクトディスク(CDのことです)誕生の数年前の時期である。

『五味麻雀入門』という五味康祐が書いた麻雀本を読んで麻雀にハマりこんだ。
点数計算など初心者向けの記述はいっさいなく、マニアックで哲学的な内容であった。
しかし芥川賞受賞者にして剣豪小説の大家であり、
その文章は実に磨きぬかれたものであるという印象があった。

さて『いい音いい音楽』という本の全体を読んで、
五味康祐氏のオーディオライフというのだろうか、それが明らかになっている。
いちばん驚いたことは最後にとっておくとして、それらを羅列していきたい。
2014年現在のヤング(五味康祐氏は文中に若者を指す言葉でこれを多用している)には、
おそらく何についての何のことかわからない記述もたくさんあると思うが、
どうかご了承願いたい。

(1)ルクセンブルグを訪ね、その小国のホテルでPCM録音のフォーレを耳にして、
   そのスピーカーが日本製(メーカー名は書いていない)であることに驚いている。

(2)マニアたるものチューナー(FM放送の受信機です)ひとつに百万円余りを投じても
   悔いはないと断言している。(40年ぐらい前の百万円です!)

(3)西ドイツ製(当時のドイツという国は東西に分かれていました)の
   純度99、7%の銅線を使ったスピーカーコードを購入したが、
   音がこもって良くなかったが、知人宅のオーディオにつなぐと素晴らしい音がするので
   コード類にも相性があると力説する。

(4)安岡章太郎から「オルトフォンの旧MC型のカートリッジは買いだめしておくべきか?」
   という相談を電話で受けている

(5)ジャズはほとんど鑑賞せず、クラシック音楽については熱狂的なファンである。
   (ただしヘルベルト・フォン・カラヤンをボロクソにこき下ろすなど好みがある)
   それ以外の「ヤング」の音楽についてはほとんどこき下ろしているものの
   「かぐや姫」に関しては人気がなくなったから解散するようなグループと違い、
   人気絶頂のなかでの解散について「ホンモノ」と絶賛している。

(6)五味康祐氏の所有するLPレコードは300枚ほど。
   愛好家であるがコレクターではないという枚数であると思った。
   意外とオーディオライフの中心がNHKのFM放送のエアチェック(録音)であった。
   特にFMの生放送、生中継のエアチェックには執念を見せる。
   ただし、その基本的機材は2トラック38センチのオープンリール。
   デッキはテレフンケン28(西ドイツ製)とルボックスA700(スイス製)と
   TEACの真空管式のR313(日本製)の3つを併用している。
   チューナーのメーカー名や型番は書かれていないが、前述のとおり
   「マニアたるものチューナーひとつに百万余円を投じて悔いなし」

(7)そんな3台のオープンリールデッキを持ちながらも、ヨーロッパの
   録音技師や放送局でプロが使うスチューダーのC37(スイス製)をゲット

(8)アナログのLPレコードは常に33と3分の1で回転するが、
   レコード針が外周をなぞる時の速度は内周のそれよりも早い。
   つまり、レコード鑑賞が進むにしたがって音質が劣化することを気にしている

(9)ヘッドフォンはゼンハイザーのHD424(西ドイツ製)とАKG(オーストリア製)
   のものを併用。ただ1978年当時のゼンハイザーのHD424の値段について
   「信じ難い安さ」と断言している。ちなみに9800円。

(10) 始まったばかりのテレビの音声多重放送(ステレオ放送)に
    大きな期待を寄せている。

(11) オープンリールを愛用するが
    発売されたばかりのメタルテープ(カセット)に興味を示し、
    録音された内容を消去する時に
    「磁束密度が高すぎるので従来のカセットデッキの消去ヘッドでは役に立たない」
    という欠点を指摘しつつも
    「ヤングのエアチェックには最適」
    と結論づけている。
    ちなみに1978年当時のカセットテープの値段が併記されていて60分テープで
     ローノイズ 400円
     クロームテープ 700〜800円
     フェリクロームテープ 1000円
    そして3Mが発売したメタルテープが1800円であり、
    「それだと7号リールのテープと値段が変わらない」
     としてオープンデッキを使い続ける。

(12) FM局のNHKと民放(文章のなかではFM東京)の放送を受信しての
     音質の違いが気になるみたいだ。
     NHKを見学してホールの機材の主なパーツがKT88(真空管)だったので、
     その部品と自宅のオーディオの相性がいいためだろうか?とする。

(13) 1979年の5月30日放送の「クラシックアワー」を
     メタルテープ(カセット)のテストを兼ねてエアチェックしている。
     エッシェンバッハが自らピアノを弾きつつ指揮をする
     モーツアルトのピアノ協奏曲だったらしいが、
     メタルテープでその音を確認しつつ、
     「ピアノの音はスタインウェイのようだが、ちょっと変だな」
     と感じてNHKに使用されたピアノの機種を問い合わせている。
     その機種はYAMAHAだったようで、
     「ピアノの音の違いが、残念ながらメタルテープでは出てこない」
     と述べている。

(14) サンフランシスコのオーディオショップに出向き、
     マークレビンソン(米国の超高級アンプメーカー)の製品を購入しようとしたら
     「アメリカでの内需にまず応えたいので日本人旅行者には売らないでくれと
      いう通達が来ている」
     と言われ、
     「マーク・レビンソンという男、もう少し純粋なオーディオ技術者と思いきや、
      店主の言葉が本当ならば、オーディオ道も地に墜ちたと言わねばならない」
     と激怒している。

ありゃ… まだまだまだまだ書ききれないほど残っているが、これは続編を書くことにして
「続きは後日」としておきたい。
予告編として、ちょっとだけ述べると私の最大の驚きの内容はこのなかでは(5)に関連する。
クラシック音楽一辺倒であったとずっと思っていた五味康祐氏が、意外すぎるアーティストに
大きな関心を寄せていたのだ。

マーヒー加藤
     
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by kaneniwa | 2014-02-05 00:53 | 草評


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