2014年 02月 06日

五味康祐の文庫本の記述にビックリしたなぁ(2)

というわけで
中公文庫の『いい音いい音楽』という五味康祐氏の読売新聞での連載を中心にまとめられた
文庫本は読んでいて、単純にオーディオ全盛時代の機種名を懐かしく思うとともに
(それにしても五味康祐氏所有のオーディオは録音技師のプロ仕様や超高級なものが多い)
五味康祐という人の行動、生活に驚くことが多かった。

それを前回のブログ記事ではとりあえず14項目あげた。
14項目もあげてしまうと、いちばん驚いた項目についての記述が薄まってしまうという懸念があり、
それを改めて今日、取り上げることにする。

私がいちばん驚いたのは、この文庫本の123ページから126ページぐらいまでの間。
その項目の表題は 
「聴きのがせない『パルジファル』」
とある。
パルジファルというのはワーグナーの作品で、
ホルスト・シュタイン指揮によるバイロイト音楽祭での録音が
1979年の4月8日にNHKのFMでオンエアされるので、
それは聴き逃せないという趣旨の文章。

私もクラシック音楽は好きであるが、
たとえばベートーベンの交響曲では
1番、2番、4番、8番などはどの部分が流れていても認識できない。
ベートーベンの交響曲でも「半分はまったく知らない」と言えるので、
ましてや長大で重圧感があるワーグナーには手を出さない。
ただオーディオマニアにして音楽愛好家の五味康祐氏の鑑賞の中心は
クラシック音楽であり、そのなかでも器楽曲ではなく大オーケストラのものは
ワーグナー作品を大変に好まれていることは書かれていることを読めば
その熱の入り方ですぐにわかる。

五味康祐氏は
「パルジファルは聖金曜日の奇蹟にちなむ宗教色の強い作品であるので、
 バイロイト以外の地では毎年復活祭の頃に上演される。
 その顰(ひそみ)にNHKも倣って四月の満月直後の日曜日を選んでオンエアする」
と、その放送を聴き逃せない所以(ゆえん)を力説してくれている。

問題は、その文章の後半なのである。

「さらにヤング向けには、放送日は未定(FM大阪)ながら
 レゲエの大物ボブ・マリー&ウェイラーズの来日ライブが聴けるはずだ」

と、さらっと書いてあるのだが、この箇所に、久しぶりに本を読みながら
「えっ!」
という恥ずかしい声を上げてしまったのであった。

バンドの実名こそ出てこないものの
(ただ、その文章から想像するにディープ・パープルやレッドツェッペリンなど)
五味康祐氏はロック音楽についてオーディオ評論家としてもそのサウンドをボロクソに
けなしている。

それが、この来日時のボブ・マリー&ウェイラーズを
「ヤング向けには」と言いつつもワーグナーのパルジファルと同様に
「聴き逃せませんぞ!」という文脈のなかで熱く語っていたのだった。

当時、来日していたボブ・マリー&ウェイラーズは
私もその音源をもっているわけであるが
東京公演で言えば武道館のような大きな会場ではなく
東京厚生年金会館、中野サンプラザ、渋谷公会堂という
比較的小さな会場でライブをやった。
ジャマイカやイギリスとは違ってレゲエはもちろんのこと
ボブ・マリーの名声さえ日本では響き渡っていたとは言いがたい時期の
五味康祐氏の「聴き逃せませんぞ!」であった。

さらに文庫本の巻末には一人娘さんであった五味由玞子さんの
「父は流れる音楽のなかに神を見ていた。
 バッハ、モーツアルトをとおして神の聲をきいていた。
 それは父にとって、もっとも敬虔な時間であったと思う。
 だから私は、音楽と対峙している父の真摯な横顔をみるたびに、
 どうしても声をかけることができなかった」
という文章があるあとがきを目にするにつけ、
このキング・オブ・レゲエの声からも
そういうメッセージを受けとっていたのだろうか?
と想像した次第である。

五味康祐氏は常に和服でロン毛というスタイルを貫いていた。
そして、クラシックだけではなくてボブ・マリー&ウェイラーズを
まだ日本でのブレイク前に聴いていたということで
何だか天才minmeiさん(高校生の娘さんもどうも絵の天才だなぁ)が
このブログのために描いてくれた、草仏教ブログのシンボルとなっている
その絵が浮かんでくるのであった。

マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2014-02-06 07:21 | 草評


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