2014年 02月 20日

名曲草鑑賞(41) BEGINの「島人ぬ宝」

平野歩夢選手がスノーボードで銀メダルを獲った「ハーフパイプ」という種目は、
パイプを半分にカットした競技場の形に由来する。
そこを勘違いして
「いやぁ平野歩夢選手のパイプカット!若いの立派だねぇ!見事なパイプカットだったねぇ!」
なんて大きな誤解を呼ぶ絶賛をしていた人がいたとかいなかったとか。
もしもマスコミでアナウンサーやレポーターがそんな言い間違いをしてしまったら 
♪テレビでは映せないラジオでも流せない♪
ということになってしまう。
そして、間違って
「いやあ立派なパイプカットだった!」
と言っていたその人が数日前の明け方に
「今度は羽生結弦選手がとうとう金を取ったぞ!金を取ったぞ!」
と騒いで家族を起こすというようなことになってしまった時に、
今回は正しい情報を伝達しているのにも関わらず、
前回の不用意な言い間違いが伏線となって新たな誤解が生まれたとか生まれなかったとか。
こういうネタはいずれナイツが寄席でやりそうだ。
ただし♪テレビでは映せないラジオでも流せない♪

そんな、あったかなかったかわからない話は置いておいて(要らないマクラだったか?)
私の高校生時代の密かな趣味についてお話したい。
私は4時頃までに自宅に帰った日は当時のNHKのFM放送で
「軽音楽をあなたに」という番組をよく聴いていた。
番組テーマ曲は「Staff」の「いとしの貴方("My Sweetness")」で、
DJ陣は湯川れい子さん、山本さゆりさん、水野マキさんが日替わりでやっていた。
いずれもコメントは曲の余韻を大事にした短いものながら
この3人の女性DJの見識はとても深かった。
重厚な伝統音楽に対する「軽音楽」という表現自体が今からみると古いものではあるが、
主にロック、ポップス、フュージョンなどのジャンルから
多くのアーティストの存在を教えてくれた今でも感謝しているラジオ番組である。
話をすすめると、私はこのラジオ番組を聴きながら
大相撲の開催中はNHKのテレビの大相撲中継を「音声を消しつつ」見ていた。
すると、たまたまではあるがラジオから流れている音楽と
テレビでの力士との闘いが奇妙なシンクロをすることがあった。
立会からの緊張感が除々に高まって盛り上がり、
取り組みの瞬間にサビが来て、
スローモーションの再生に時に再び盛り上がりは保ったままで
静かにフェードアウトしていく曲などは
「この画像のために作ったのではないか?」と思わせてくれた。
レッドツェッペリンの「天国への階段」(Stairway to Heaven)などは
その要素をふんだんに含んでおり、
ブリテッシュロックはそんなに愛好していなかったのにも関わらず
「大事な定番」となった。
当時の看板対決であった麒麟児vs富士桜戦などは、ハードロックやヘビィメタル、
さらにはパンクロックなども抜群にマッチした。
時代はうつって富士桜が中村親方となり
その息子がロックミュージシャンとしてデビュー(GATS TKB SHOWの中沢ノブヨシ)した時に
「やっぱりロック魂を受け継いだんだ」
と一人うなずいた。

結局、その「奇妙なシンクロ」を楽しむために、
あるいはもっと意図的に奇妙なシンクロを作り出すために、
いろいろな音声をバックに相撲中継の映像を楽しむということが起こった。
私の記憶にずっと残るのはサーカス相撲で有名であった栃赤城関である。
栃赤城本人がクラシック音楽、特にバロック音楽が大好きであったこともあり、
テレマン、バッハ、ビバルディなどの小品が実によくマッチして、
その繊細な転調と技の切り返しのタイミングがバッチリとハマった時には
一人孤独なガッツポーズをしていた。
私が映画監督や舞台の監督になっていたとすれば
「そのための大事な修行をしていた」といえるのであるが、
今は「奇妙な趣味をもっていた」というしかない。 

 さて、今回のソチ五輪でのフィギュアスケートで、その奇妙な趣味の再燃があった。
羽生結弦選手のショート・プログラムの演技は「人類史上最高得点!」と言われるように
完璧な演技であったが、いかんせん2分50秒以内という時間内に合わせる楽曲は
初期ビートルズぐらいしか思い浮かばなかった。
なので4分30秒±10秒と、4分40秒ほどの演技時間であるフリースタイルが、
いろいろなジャンルの楽曲を試すことができていいと思った。
今回のソチ五輪の男子フィギュアスケートのフリースタイルでは4位に入った
スペインのハビエル・フェルナンデス・ロペス選手の演技などは
コミカルな動きの要素もあって非常にいい題材であるのだが、
それはまた後の楽しみとしてとっておくとして
羽生結弦選手のフリースタイル演技に合う4分40秒の楽曲を探しはじめた。

まず、クラシックの分野からは妙味があるものは見出しにくかった。
たとえばモーツアルトでいえばクラリネット5重奏曲 ロ短調 作品115 第3楽章や
フィガロの結婚K492序曲などは演奏時間と演技時間の兼ね合いでいえば
バッチリなのであるが、中途半端に演技とマッチしていておもしろくない。
当たり前だけれどもクラシックの分野のなかでは実際に演技で使われた
チャイコフスキー作曲の幻想序曲『ロメオとジュリエット』からの抜粋の威力を
まざまざと見せつけられた形となった。

そこで
「スケートの伴奏としてはエキシビション以外ではあり得ない歌詞付きの楽曲で
 思いっきり違和感を楽しむ」
という視点からこの選曲作業を続けた。
その結果、見出した私にとっての場外ホームランだったのが 
BEGINのLIVE DVD「アコースティックコンサート2007 らいぶいず往来」
(2008年2月27日発売)のなかからの「島人ぬ宝」であった。
ライブ音源であるということもあり、曲が始まる前の拍手のなかで
最初に音が出てきた瞬間に羽生結弦選手の演技の始動を合わせると、
演技が終わった後にしばらくタメを作った後に万雷の拍手と
歓声が沸いてくるところの芸術点が高い。

イントロからBEGINの比嘉栄昇が奏でる印象的な三線(さんしん)でのリフが、
曲と演技の要所で何度かリフレインされて
素晴らしいアクセントになっているというところもいい。
楽曲の力によって
♪テレビでは映せないラジオでも流せない♪世界というものが
そこに現れてくれたという実感があった。

青を基調にデザインされたソチの会場は
スケートリンクであるのにも関わらずに南の美しい海を連想させ、
その海から飛び出てスピンをするイルカ君を羽生結弦選手は表現しているかのように
思わせてくれた。
そしてまた、これはたまたまではあるが
羽生結弦選手のフリー演技は前半の痛い失敗を耐えに耐えて
終盤の難易度の高いジャンプを成功させ
体力を振り絞ってエンディングまで持っていくという構成になったのだが、
そこに同じく前半に置かれた
♪汚れていくサンゴも減っていく魚もどうしたらいいのかわからない♪
というような歌詞と、その歌詞にこめられた心情と動きが絶妙にシンクロされていく。
そして重要なのは要所でリフレインされる三線でのリフとともに
タイミングにタメを作りつつ
「この瞬間しかない」
というところで発せられる
♪イヤササー!♪
の掛け声というか合いの手。
出身も北と南、体型もスリムとファットと
まったく違う羽生結弦と比嘉栄昇のそれぞれの芸銃性の邂逅(かいこう)がそこにあり、
羽生選手はこの♪イヤササー!♪の掛け声がかかるたびに
その合いの手は愛の手となって不思議なエネルギーが注入されていくようにしか、
何度見ても(わはは、この組み合わせで相当見ました!)思えなくなってくる。
そしてBEGINは「島人ぬ宝」に気がつき、羽生選手は「金メダルという宝」を手にする
プロセスを描く壮大な物語となっており、
BEGINのファンも羽生結弦選手の両方のファンが手をとりあって泣ける
物語性のある組み合わせとなったと自負している。
(だから何だと言われても何ですが…) 

たまたま、私がこの組み合わせでモニタリングをしている時に
長女(15歳)が
「何バカなことやってんの?」
とそばに来た。
長女は最初は南国調の楽曲と氷の上での演技という違和感を楽しんでいたが、
その物語性に引きこまれて感動している。
もう15年も長女ウォッチングを続けている私にはわかるが、
現在受験勉強中の長女は
♪教科書に書いてあることだけじゃわからない♪
の部分にいちばん心の琴線を揺さぶられている。
BEGINの書いた歌詞のとおりだと思う。
♪教科書に書いてあることだけじゃわからない♪のだ。
やっぱり教科書だけではなくて今の時期は問題集をやったり参考書とかも参照しなきゃ。
イエス・キリストも
「人はパンのみに生きるにあらず」
と言ったというが、その通りだ。
パンだけではなくて米やおかずも食べなければいけない。違うか?

※ このブログ記事のマクラとオチは、さすがに自分でも無茶苦茶書いたなぁと思っています。

マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2014-02-20 16:18 | 草評


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