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2014年 05月 12日

名曲草鑑賞(42) マイルス・デイビスのカインド・オブ・ブルー

b0061413_1143548.jpg 今までは曲単位でブログに綴ってきたこのコラムであるけれども、しばらくはアルバム単位で論じてみようかと思う。今日のような暖房も冷房も要らない5月の快晴の昼間にマイルス・デイヴィス(Miles Davis)のカインド・オブ・ブルー(Kind of Blue)などを聴いていると、どうしようもなく20歳前後のことを思い出す。5月の京都の快晴のもと、かつて荒神口にあった「しあんくれーる」という名の老舗のジャズ喫茶でのアルバイトを思い出す。カインド・オブ・ブルーは世界で1000万枚以上売れた。たぶんジャズというジャンルのなかではもっとも売れた録音物であると思う。個人的にはマイルスの他のアルバムで好きなものはたくさんあるけれども、お客さんのリクエストのベスト3には入っていたので、A面もB面も(ああ、アナログ・レコード時代の言い方だなぁ)もう何回聴いたのかわからない。ピアノがビル・エバンス(Bill Evans)と一曲だけウイントン・ケリー(Wynton Kelly)、テナーサックスがジョン・コルトレーン(John Coltrane)でアルト・サックスがキャノンボール・アダレイ(Julian Edwin "Cannonball" Adderley)などなど、いつの時代でもマイルスは最高のメンバーを集めているけれどもこのスパースターたちの集合体は凄い。しかもそれらメンバーが精密機械のように緊張感のある演奏を繰り広げる。その緊張感ある演奏をマッキントッシュ(アップル社とは関係ない)のアンプのボリュームの11時から1時の間ぐらいにしておくのが通例だったから、実際の演奏音よりもはるかに大きいおそろしいほどの大音量が改造JBLのスピーカーから出てくる。明るい5月のその一日を暗くて大音量に満ちたそんな異様な空間で過ごし、仕事を終えて外に出るとまた漆黒の夜の世界があるという日常は、どうも鬱屈した気持ちが高ぶってくる。しばらく、その鬱屈した気持ちを思い出すのが嫌で、ラジオなどから一曲目の「So What」などが流れてくるとスイッチを切ったものだった。そんな5月に、大音量というわけにはいかないけれども真っ昼間からこのアルバムをちゃんと聴いてみる。しあんくれーるで出していたコーヒーである「KEY COFFEEのスペシャルブレンド」というものを当時と同じ濃い目で、当時と同じ作り方でやってみる。その空気感のなかで、理論や評論重視の頭で聴いてきたのでもなく、情感を中心に心で聴いてきたものでもなく、毛穴から入ってきたような身で聞いてきたサウンドというものがあったのだということに気がついて没頭した。

マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2014-05-12 13:50 | 草評


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