2014年 11月 02日

コッヘル251番 ニョッキ(男爵いも新じゃがバージョン)

b0061413_434275.jpg 北海道の先輩が男爵いもの新じゃがを送ってきてくださった。それも少量生産のため地元北海道でさえあまり見かけないという「今金男しゃく」というブランドじゃがいもである。北海道には今まで春先に1回、春に1回、夏に2回、真冬に1回と合計5回足を運んでいる。なぜか新じゃがの季節でもある秋はまだ1回もないけれども、それでも常々思うのは「何で北海道でジャガイモを食べるとビックリするくらいに旨いのか?」という素朴な疑問である。普段から男爵いもでもメークインでもジャガイモはほとんど北海道産を買っているのに北海道で食べるジャガイモとは何かが違う?なぜか?その問題を検証したい。一種のライヴ感覚というか北海道の湿気が少ない空気感のなかで味わっていたからということもあるだろう。しかし、結論めいたことを先に開陳すれば「ブラジルでコーヒーが旨いとか、新潟で米が旨いのと同じ法則」ということになる。読んでいる人はブラジルでコーヒーが旨かったり新潟で米が旨いなんて当たり前だろ?と思うかもしれない。ある意味、当たり前である。しかし、その当たり前に妙味があるみたいだ。たとえばブラジル産コーヒー豆のブランドである「ブラジルサントス」で言えば、その銘柄の一級品はほとんど合衆国、日本、ヨーロッパへの輸出用でブラジルの国内では二級品かせいぜい準一級品しか出回っていない。それでも「コーヒーへの思い入れの深さと生活密着度が違う」ので、一級品ではなくともその豆の焙煎具合などに合わせて濃ゆく抽出されたコーヒーは今でも飲みたくなるほど旨い。そしてサンパウロのような大都会では希少価値のある一級品を使ったホテルのカフェのコーヒーから市井のバールのオンボロマシンから抽出されたエスプレッソに至るまで、それぞれに味わい深い。新潟で米が美味しいというのも、新潟県民全員が魚沼産コシヒカリを食べているわけではないけれど、米の生産者が身近なところに必ず居ることもあって平素からの米に対する思い入れの深さが違う。その思い入れの深さは炊き加減をはじめとする調理への知らず知らずのうちの気遣いとなり、保管法などについてのケアの意識の高まりとなり各家庭での米の平均レベルはすこぶる高くなり「こりゃ許せん」という最低ラインも押し上げることとなる。かくして新潟県内ではお弁当屋さんでもコンビニや居酒屋チェーンのおにぎりでも、その最低ラインを下回るとすぐに不評となるので米が旨いのである。

b0061413_4344545.jpg 「香川県ではうどんが旨い」なんていうのも、すべての讃岐うどんが「さぬきの夢」のような地物小麦粉を使っているわけではなくむしろオーストラリア産小麦がその主流らしいのだが、信号機の数と同じぐらいうどん屋さんがあるという文化的環境(高松市内ではわずかに信号機の数の方が多いそうだ)のなかで、個性ととらえられる前段階で「許せんほどの低レベル」とされたら自然淘汰されてしまう。さて、そのジャガイモに対する思い入れの深さのレベルが違う北海道から届いた最高レベル希少価値男爵いもの、しかも新モノ。あまりの旨さに写真を撮ることも忘れて掲載できなかったが、まずはダッチオーブンで蒸し焼きにしたものを「じゃがバター」とした。バターの塩気だけでほぼ素材の蒸し焼きのままに食べたそのジャガイモ(男爵いも)に、まずは「モノが違う」ということを実感した。考えたら居酒屋の定番メニューでもある「じゃがバター」を私はあまり今まで注文してこなかった。いつもこの素材でじゃがバターが食べられるならば、常に真っ先に注文していたと思う。続いて私の出張中にシャラポア(妻・日本人)が「ジャガイモ主体のクリームシチュー」というものを作ったら、大量に作ったけど子どもたちが旨い旨いと食べまくって私が出張から帰ると全然残っていなかった。さて、野菜通の近所の八百屋さんで買い物をしている時に「ところで北海道産の新じゃがのいちばん美味しい食べ方ってどんなもの?」と聞いた時に「いも餅」というシンプルな食べ方を教わった。これは茹でた新じゃがをすり鉢で練りに練ってそれを和風だしで食べるか、きな粉などをつけてデザートとして食べるというものであった。そこでさっそくその「いも餅」の製作途中に、練っている途中に急用が入っておやつ時間から夕食時間になってしまったということもあり、練ったジャガイモをそのまんま団子状にするところまでは「いも餅」のプロセスとしてイタリア料理のニョッキとすることにした。コッヘル86番で「月見団子風ニョッキ」というものを作ったが「芋パスタ」とも言えるニョッキは団子や餅の仲間といえば言える。それに初めて食べてみる「いも餅」よりも馴染みがあるニョッキの方が「今金男しゃく」の素材のスゴさを実感できる気がした。そして、実感した。インド人もビックリのカレーというものがあるとして、それよりもイタリア人がビックリするニョッキではないのか?通常、ニョッキには強力粉などを混ぜて練り込むけれどもジャガイモ本体から上質のでんぷん質が粘り出てくるので必要なし。写真のトマトソース(ひき肉、えのき、刻みタマネギなど入り)も相性バッチリで良かったのだが、塩と粉チーズで食べたバージョンも良かった。仕上げの茹で加減も「偶然アルデンテ」で良かった。もっとも新潟県産コシヒカリの新米が固めに炊いたとしても軟らかすぎるぐらいに炊いたとしても、まあお粥だって美味しいのだから素材力で広い許容範囲をもっていることから、この「偶然アルデンテ」の「偶然」も、今金男しゃくの素材力からきた必然であったのかもしれない。


マーヒー加藤

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by kaneniwa | 2014-11-02 06:12 | 草外道


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