2015年 10月 09日

青空文庫で恐怖体験

iPadで読書をした時の恐怖体験。

今までも著作権切れの作品などが所収されたインターネットの
「青空文庫」でiPadでの読書をしてきた。
まず紙の本よりも優れているのは字の大きさや画面の明るさを
自分の意志で調整できることだ。

北大路魯山人の書いた文章などは128も「青空文庫」に入っている。
北大路魯山人などは一つづつ、ちょっと読み切るのにちょうどいいし、
名文でもあるので読みきれる。
読みきった後にiPadの電源を切るか、スリープ状態にしてしばらく時間が経つと
「青空文庫」のインデックスに自動的に戻っていた。
つまり、いつも読みきっていたので
「画面をタップしてメニューを呼び出し、閉じるを選ぶ」
というiPadで作品を閉じて自分の意志でインデックスに戻る方法は
知らずにいた。

岡本綺堂の作品群などは、やはりさすがの風格がこもった卓抜した文章での怪談であり、
それを寝床でiPadで読んで人差し指でシュシュッとページをめくるという行為自体に
シュールなものは感じたけれども、分量でいえば選んだ作品は読みきって電源を切って寝た。

問題は、昭和10年に発表された夢野久作の『ドグラ・マグラ』のiPad読書体験の恐怖。
探偵小説の奇書、異端文学史上の偉業、怪奇小説の奇跡など、色々な評価はあるが
学生時代以来聞いてきた評判は
「読み通したら正常な精神状態ではいられない」
というものだ。

噂どうりのさすがの迫力で『ドグラ・マグラ』の文章は迫ってきた。
これは深夜に寝る前に読むものではないなぁ…と思いつつ
作品を閉じようと思ったが、前述のとおりに私は「青空文庫」の閉じ方というものを
今ひとつ把握していなかった。
何となく、巻末までいけば閉じるメニューが出てくるような気がして、
ものすごい勢いでシュシュっとページをめくりまくっていたのだが、
そこでやはりさすがの名文にして奇文の極地のような言葉群が
人差し指の指先にねっとりと絡みついてくるような感触があり、
そこで必然的に目に入る奇妙な言葉のかけらが脳に刷り込まれてくるような、
とっても怖い思いをしてしまった。
何だか再び開くことをためらったままになってしまった。
最初の方しか読んでいないけれども『ドグラ・マグラ』恐るべし。

というわけで「青空文庫」を読むのをやめて、
今度は「青空文庫」に入っている作品を読み上げてくれるという
「音声文庫」というアプリを入れて、
そのお試し用の無料サンプルのなかの先頭にあった
太宰治の『人間失格』を選んでタップして
眠りに入ったのだが、
これまたカーナビの案内音声のような合成音の女性の声で朗読される
『人間失格』というものは、出だしから
「この文章は、こんなに怖かったか?」
と思わせてくれるほどにシュール過ぎて怖かった。

情けないことに電源を切ろうと思ったがわずかに手が届かない場所に置いてあり、
眠気の方が勝ってしまって、そのまま眠った。

音声の方は、無料サンプルだと15分間で自動的に朗読をやめたようなのだが、
夢の世界の方は、明け方に
「大都市のビルの谷間に竜巻がやってきて大勢の人々が巻き込まれる」
という、正夢には絶対になって欲しくない種類の悪夢を見て目が覚めた。


マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2015-10-09 12:49 | 草評


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