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2006年 09月 29日

超訳徒然草・吉田くんのブログ(第53段)

是も仁和寺の法師、童の法師にならんとする名殘とて、
各あそぶ事ありけるに、醉ひて興にいるあまり、
傍なる足鼎をとりて頭にかづきたれば、
つまるやうにするを、鼻をおしひらめて顏をさし入れて舞ひ出でたるに、
滿座興に入る事かぎりなし。

しばしかなでて後ぬかんとするに、大方ぬかれず。
酒宴ことさめて、いかがはせんとまどひけり。とかくすれば、
びのまはりかけて、血たり、ただはれにはれみちて、息もつまりければ、
打ち割らんとすれど、たやすく割れず、響きて堪へがたかりければ、
かなはで、すべきやうなくて、三足なる角の上に帷子をうち掛けて、
手をひき、杖をつかせて、京なる醫師のがり率て行きける、
道すがら人の怪しみ見る事限なし。

醫師のもとにさし入りて、むかひゐたりけん有樣、さこそ異樣なりけめ。
物をいふも、くぐもり聲にひびきて聞えず。
「かかることは文にも見えず、傳へたる教もなし」といへば、
又仁和寺へ歸りて、親しき者、老いたる母など、枕上に寄りゐて泣き悲しめども、
聞くらんとも覺えず。

かかるほどに、或者のいふやう、
「たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらん。
ただ力をたててひきにひき給へ」とて、
藁のしべをまはりにさし入れて、かねを隔てて、頸もちぎるばかり引きたるに、
耳鼻かけうげながらぬけにけり。からき命まうけて、久しく病みゐたりけり。

(吉田兼好法師 『徒然草』 第53段)

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これも仁和寺のお坊さんの話なんだけど、子どもの僧侶が正式に坊主になるので
フェアウェルパーティとなって、それぞれに芸を披露してバカ騒ぎをした。
その時に、あまりにも雰囲気にノッてしまって釜をとって頭にかぶってみた奴がいた。
鼻がつかえてしまう顔を無理矢理おし込んで踊りだした。
みんな大変よろこびスタンディング・オベーションの大盛り上がりだった。

しばらくして、釜から頭を抜こうとしたが、これがまったく抜けない。
みんな急に酔いから醒めちゃって、とにかく戸惑っちゃった。
あーだこーだやっていると、首のまわりの皮がやぶれて流血沙汰になってきた。
ひどく腫れてくるし、息もできないみたいで苦しそう。
たたいて割ろうとしても、簡単に割れないどころか、音が響いて耳が痛くなっちゃた。
どうしようもなくなって釜の五徳部分に上着をかけて手を引き、杖をつかせて医師のもとに
連れていったのだが、その途中は通行人に注目度ナンバーワン。

医師と向かい合っている状況を想像すると、もう異様な光景すぎる。
病状を説明しようにも。釜のなかで音がエコーし、こもって何を言っているのかわからない。
医師は
「これは前例がない症状で、文献にも治療法は書いていないですね」
と言ったので、しかたなく、仁和寺にもどった。
仲間や老いた母親が枕もとに集まって悲しんで泣いていたが、
たぶん本人には聞こえていない。

すると、ある人が
「耳や鼻がちょん切れるということはあっても、、死んだりしないでしょう。
ここは一つ、力まかせに引き抜きましょう」という強行派っぽい意見を言った。
藁を首のまわりに差し込んで、首が切れるぐらいにひっぱってみた。
耳と鼻がとれてあとに穴が空いていたが、これでようやく抜けた。
かなり危うかったが、命びろいだ。そして、ずっと寝込んだ。
・・・・・・まだ寝込んでいる。

超訳BYマーヒー

by kaneniwa | 2006-09-29 21:00 | 徒然草


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