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2006年 12月 16日

美空ひばりの『JAZZ&STANDARDS』を語る (5) 恋人よ我れに帰れ

さて、美空ひばりの『JAZZ&STANDARDS』について書いてきたが、
4曲目は最初から最後まで、完全に英語だ。
曲目も 「恋人よ我れに帰れ LOVER, COME BACK TO ME」
と、これまたJAZZのスタンダード曲のなかのスタンダードである。

美空ひばり公式ホームページで、これまた調べたところ、
吹き込んだ年月日がわかった。1965年の9月5日である。
マーヒーは当時満2歳だなぁ。先述のSHANGHAIの吹き込みから12年が経過し、
美空ひばりは28歳になっている。

美空ひばりにライバルはいない。
しかし、あえて他の女性演歌歌手と比較して、その声の特質を言うなら、
美空ひばりの歌は演歌歌手特有の「こぶし」というよりも、
蓄音機時代に誇張されたバイオリンのビブラートの音質に近いものが
あると思う。どうだろうか?
そして、適度にハスキーであり、適度に甘い美空ひばりの声がスィングしている。
そして、今聴いているマーヒーの身をスィングさせるような、そんな身で感じる
周波数のところでそれが絶妙にビブラートしながら揺れている。
音がスィングしているので身も、それに合わせてスィングせずにはいられない。

ロックなどで「たてノリ」という言葉があるが、この4曲目を聴きながら感じるのは
「強烈なよこノリ」というグルーヴである。

美空ひばりは横に揺れる超音波を出しているというのがマーヒー説であるが、
これは犯罪捜査協力などで有名な鈴木音響研究所の鈴木松美先生などに
調べてもらわなければ実証されない。

バックバンドは原信夫とシャープス・アンド・フラッツである。
非常にキレのいいホーンセクションからイントロがはじまる。 
パーカッションがリズムキープをしながら引っぱっていき、
短いサキソフォンのソロパートにしてもみんなとにかく演奏のキレがいい。
原信夫とシャープス・アンド・フラッツというのは、こんなにいいバンドだったのか。
ダン池田とニューブリードなんかも、本気を出せばこれぐらいやるのだろうか?
とにかく、スーパーマーケットのBGMなんかで流れている
インストゥルメンタル(歌詞無し音楽)などとは、まったく異質の
気合いの入った演奏である。
きっと、普段から何千回となくやっている楽曲か、あるいは本当に彼らが
やりたかった楽曲であるということがヒシヒシ伝わってくる。

他にも、『JAZZ&STANDARDS』には、全部英語で美空ひばりが歌っている
ものに「スターダスト」や「慕情」がある。

重ねて失礼であるのかもしれないが、美空ひばりが英語を自由に使いこなして
いたということは聞いたことがない。

英語の表現で「暗記」ということを現わすのに「メモライズ」の他に
「ラーン・バイ・ハート」という言い回しがあったように思う。
「ハートで学べ」ということであり、実際に美空ひばりはこの楽曲を
「ハートで覚えた」のだろうと思う。
心で覚えたものは、心で再現される。それが現代のマーヒーのハートにもヒットする。

心で再現された表現は、間違いなくもはや美空ひばりその人のものだが、
1965年以前の誰の歌った「LOVER, COME BACK TO ME」が、
美空ひばりの心を最初にノックしたのだろうか? 
私には予感しかないが、この曲の2分30秒のなかに、
わずかにそういった先達のクセや訛(なまり)が入っているのではないだろうか?

これ以上先のことは、それこそ鈴木音響研究所にたのむしかない。


マーヒー加藤

by kaneniwa | 2006-12-16 16:47 | 草音


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