2007年 03月 14日
高野の證空上人、京へのぼりけるに、細道にて、 馬に乘りたる女の行きあひたりけるが、口ひきける男、 あしくひきて、聖の馬を堀へ落してけり。 聖いと腹惡しくとがめて、 「こは希有の狼藉かな。四部の弟子はよな、比丘よりは比丘尼は劣り、 比丘尼より優婆塞は劣り、優婆塞より優婆夷は劣れり。 かくの如くの優婆夷などの身にて、比丘を堀へ蹴入れさする、未曾有の惡行なり」 といはれければ、口ひきの男、 「いかに仰せらるるやらん、えこそ聞きしらね」 といふに、上人なほいきまきて、 「何といふぞ、非修非學の男」 と、あららかにいひて、きはまりなき放言しつと思ひける氣色にて、 馬ひき返して逃げられにけり。 たふとかりけるいさかひなるべし。 (吉田兼好法師 『徒然草』 第106段) 高野山に住む証空上人が京の街に降りてきたときに、 細道で、馬に乗った女と出くわしたのだが、馬の口を引いている男が、 誤操作をして馬を引き、上人の乗っている馬をそばの堀に落としてしまった。 上人はカンカンに激怒して 「これはとんでもなく乱暴なことじゃ。 釈尊の弟子の間の4部制リーグの中では出家した比丘よりも 比丘の尼のほうが格下で、 その比丘の尼よりも在家信者たる優婆塞のほうがさらに格下で、 優婆塞よりも優婆夷のほうがさらに格下だ。 おまえのようなリトルリーガーがメジャーリーガーである私を堀に落とすなんて こんなことは前代未聞のヘッポコプレーだ」 と言ったので、女の馬を操っていた男は 「何をおっしゃっているのか、さっぱりわかりませーん」 と言えば、上人はもっともっと逆上して 「何を言ってるんだ、この勉強不足の未熟者がぁ」 とエキサイトしてわめいたのだが、 (上人に最低限の良心が残っていたのか) あまりに酷いことを言い過ぎたと思った様子で、乗っていた馬を 来た方向に向けて逃げて行ってしまった。 尊い、なんて言葉は本来は似合わないが、 修行者である上人と正直で純朴な男との間の、 みごとな口ケンカだ。 超訳BYマーヒー
by kaneniwa
| 2007-03-14 22:15
| 徒然草
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