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草仏教ブログ

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2007年 12月 24日

名曲草鑑賞 (1) ベートーベンの交響曲第九番「合唱」

まじめな音楽論評とはいえないが、
時々、クラシック、JAZZ、レゲエ、デルタブルース、昭和歌謡、
などのジャンルから「名曲」または「隠れた名曲」といわれるようなもの、
あるいは勝手にそう思うものをとりあげて鑑賞し、勝手な解釈を述べたい。

第1回目はベートーベンという大物の「第九」をとりあげたい。
長い曲で、指揮者のペース配分でばらつきはあるがだいたい75分前後。
この「第九」の演奏時間がCDという録音物が誕生した時の基準になった
という説を、真偽は定かではないが聞いたことがある。

冒頭から暴投(ワイルドピッチ)というような曲だ。
オーケストラのチューニングも曲に取りこんでしまっているので、
弦楽器のチューニング音からこの曲ははじまっている。
その混沌のなかから劇的なメロディがオーケストラ全員参加で鳴る。

たとえば、ロックのシカゴ(バンド名)の曲で、工事現場のサンプリング音から
ホーンセクション(管楽器)のイントロが出てくるというような曲を
聞いたことがある(曲名は忘れた)が、そういう今でいうサンプリング音の
ような考え方をしているのではないだろうか。
江戸時代に、こうしたチューニング音からメロディが飛び出してくるような
斬新な発想、しかも作曲者はほぼ聴力を失っているというのはやはり
画期的だ。

昨晩は、日本ではこの「第九」の演奏と同様年末の風物詩というか、
テレビで漫才の祭典であるM-1グランプリを鑑賞したのだが、
(サンドウィッチマンが優勝して1000万円を獲得した)
ベートーベンは楽聖と呼ばれるとような聖人であると同時に、
これは怒る人もいるかもしれないが、生まれ変わって
現代の日本でお笑いの世界に居たとしても、ストイックなまでに
お笑いを追求していたのではないかと思われる。

後日、ベートーベンのバイオリンソナタ第5番で言及してみたいが、
「ボケとツッコミ」、「ノリツッコミ」、「てんどん」(くり返し)など、
お笑いのテクニックを満載しているのではないかと思える曲がある。
というか、クラシック音楽のソナタ型式というものと、
構成のしっかりした漫才との法則性のようなものに共通点が
多いのかもしれない。

このベートーベン交響曲第9番の第4楽章に登場する
「歓喜の歌」はあまりにも有名で、著作権もとっくに切れているから
現在、マツモトキヨシのCMソングにもなっているし、
(年末バージョンか?)
ドリフの大爆笑年末スペシャルのエンディングで歌われたりも
していた。

その有名なメロディにたどり着くまでのプロセスに、
ベートーベンの「ボケとツッコミ」の才能の一端をみることができる。

これは人員の規模からいえばバイオリンソナタのような二人漫才
(バイオリンとピアノ)ではなく、またドリフのような弦楽5重奏でもなく、
フルオーケストラに大合唱団が付くという、吉本新喜劇の十倍ぐらいの
規模で、この壮大な「ボケとツッコミ」は展開される。

第4楽章がはじまると、
それまでこの長い交響曲に登場してきた色々な
メロディの断片が演奏されるのだが、それらは次々と
コントラバス集団の

♪ そないな音楽じゃ ♪ あきまへんでぇ

と演奏されるメロディで否定されていく。
明確な 「ダメ出し」
である。 
ここまで40分以上演奏してきて、まだ合唱の言語は一切登場して
いないのに、ちゃんと楽器の音だけで会話をしている。
その会話の中身はベートーベン自身の「ボケとツッコミ」なのだ。
ちなみに、大合唱団は全員が歌い出し前のクリスタルキングの
ツインボーカリストのように、ここまで「長時間耐えている」のだ。

そして、このツッコミの基本ともいえる
「ダメ出し」
が何度も続いて、素晴らしい「歓喜のボケ」がはじまっていく。
その序奏というか、助走に、はじめて言語が登場するのだ。

コントラバス集団による何度かの「ダメ出し」に、
やけになったオーケストラ全体がたわけた方向に走りだそうとする瞬間、
声楽のソリストが

♪ O Freunde, nicht diese Töne!
 Sondern laßt uns angenehmere
 anstimmen und freudenvollere.

あんさんがた、そないな音じゃあきまへんで
お客はんがたもふくめて、みんながもっとこう
ぱーっといけるような音楽をやらなあきまへん

(超訳BYマーヒー)

と歌いあげられる声に最後のダメ出しをされ、そこからあの大円団が
はじまっていくのだ。

というわけで、やっぱり大晦日は、
ダウンタウンの「絶対に笑ってはいけない」シリーズを録画し、
(今年は笑ってはいけない病院だそうです)
NHK教育の「第九演奏会」にチャンネルを合わせようともと思うが、
格闘技も気になるし、やっぱりCDにしよう。

マーヒー加藤
 

by kaneniwa | 2007-12-24 07:21 | 草音


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