2008年 10月 11日

探訪・神田界隈 (5)  まつや で

b0061413_18242785.jpg 原子のなかの素粒子のなかのクオークの話題を論じた昨日のブログ記事から、再び、宇宙のなかの地球のなかの日本のなかの東京のなかの神田のなかの蕎麦屋さんのお話に戻りたい。 蕎麦のまつやさんのなかに入ると、まず思ったのが、タバコの煙が立ちこめている。この東京都千代田区近郊は、全国のなかでも屈指の禁煙圏であり、路上喫煙での罰金導入なども、全国でいちばん早かったはずだ。 今後はどうなるのかはわからないが、とりあえず、今年の8月に行った時には、オヤジたちやオヤジっぽい若者たちが目立つまつやさんの店内で 「ここはタバコが吸える場所だ」 ということでくつろいでいる。印象に残っているのはすぐ近くの席に座っていたスキンヘッドであるけれども長いひげを生やしたオヤジさんが、実にうまそうにタバコを吸っている様子だった。




目は天井というよりも宙を見つめ、「たまらんなぁ」 という表情をしていた。

この まつや さんの本店は、実に味わい深い。

お店自体は明治17年の創業だから、江戸時代生まれのお客さんも
かつては通っていた老舗であるが、
「タバコなんか吸いやがったら、せっかくの蕎麦の香りが台無しじゃねえか」
などというような感じではない。(そういう感じの蕎麦屋さんというのは多いと思う)
メニューにはカレー南蛮蕎麦などもあるし、それを始めたのも今から見ればだが、
けっこう昔からのようだ。

そして、蕎麦などのメニューを運んでくれる人が、
秋葉原のメイド喫茶のメイドさんのメイド服にも似たメイド服を着ている。
似ているが、よく見ればちょっと違う。
ウエイトレスさんの服装の流行を何回転もくぐり抜けた風格ある
ユニフォームである。
野球のユニフォームにたとえるならば、素材はその時代の最先端の
ものを使用するが、基本スタイルは導入当時からのスタイルを変えていない
早稲田大学とか、慶応大学のユニフォームという感じである。

この まつや さんは、明治17年からの伝統が生きている。
だから、狙ったレトロではなくて本物のレトロなのであるが、
そのレトロ具合は実に複雑であって、明治、大正、昭和の時代の
新しいものを融通無碍に取り入れていて、その新しいものが自然に
ヴィンテージとして熟成し発酵したレトロなのである。

これも、いいたとえかどうかわからないが、ニューヨークやニューイングランドや
新潟という地名も、これだけその地名で呼ばれた歴史が何世代も経るほど長いと
ニューだとか新だとかついていても何だか伝統なり、古さを感じさせるのと
似ている。似ていないか?

どうも、このレトロ具合は、横浜ニューグランドホテルの 「ニュー」 な感じだ。
新阪急ホテル(京都駅前)の 「新」 のフィーリングだ。

その、いつの時代の流行の最先端だったか分からないがそれなりの
伝統の威厳がたもたれたメイド服っぽい女性が注文をききにきた。
私よりもちょっと年上の 「お姉さん」 と呼びたくなるような人だった。
正直言って、昨年の夏に探訪してみた秋葉原のメイド喫茶よりも
「これが萌えの感情というものなのか・・・」 というものを感じてしまった。 

こんな時にシャイになっても何にもならないのに、なぜかマーヒーは
突然シャイになってしまった。

そして、隠れメニューの ヌキ で日本酒を一杯やってから、
せいろ蕎麦を食べて帰る予定だったのだが、
どうしても、どこからか 「お前が ヌキ で一杯やるのはまだ早い」
という声が聞こえてきたような気がした。

10年前に来た時には、「お前にヌキで一杯は10年早い」 という声が
聞こえてきた気がした。

それから10年経ったし、四捨五入すれば50歳にもなるオヤジになるので
「もうそろそろいいだろう」 と思って満を持してこの まつや さんにやってきた
というのに、
「せいろ蕎麦をひとつください」
とだけしか、なぜか言えなかったのだ。
10年早いではないけれども、まだちょっと早かったみたいだ。

蕎麦だけをササッと食べて、左側の戸から神田の街に出た。

しかし、まつや さんの蕎麦は後味が非常にいい。

食べている最中は、もっと美味しいと思う蕎麦はけっこうあるように思えるが、
これほど後味のいい蕎麦というのはそんなにない。

後味の良いものは得だなぁ。

「何で ヌキ と日本酒を注文できなかったのだ!」
と、己の予期せぬ弱気とシャイを責めてはみたが、
蕎麦の後味のあまりの良さに、
「やっぱり来てみて良かったなぁ」
と、しみじみ感じたのだった。

まつや さんのキーワードは余韻(よいん)。
明治の余韻も大正の余韻も昭和の余韻も、
蕎麦の余韻も複雑なハーモニーを醸し出しつつ
残っているのだ。

マーヒー加藤
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by kaneniwa | 2008-10-11 00:33 | 草評


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