2010年 05月 15日
もう15年ぐらい寺の本堂のピアノを調律していなかった。私はちょっとばかりチューニングがゆるくなっていても 「ほうらホンキートンクだよーん!」 と言うようなアバウトな人間であるのだが、このピアノから奏でられる曲は、公式には月に1回の行事の際に 「真宗宗歌」 などの仏教賛歌だけ。さらに非公式にはマーヒー加藤がギターコードをピアノの和音に置き換えて弾きやすい曲だけを演るだけということで、88鍵のなかでも特定の鍵盤ばかりを可愛がっているという事情もあって、ホンキートンクにもなっていなかったのだ。 そこでYAHAMAさんに連絡して調律師に来ていただいた。やって来たのは美しいロングヘアの女性だった。 「こんにちは、お久しぶりです」 と彼女は挨拶した。 「えっ?俺は君みたいな美人は知らないぞぉ・・・」 と言ったのだが、若くして亡くなられた彼女のお父さんのお葬式をやっていたのだ。その時、彼女は中学生ぐらいだった。 ご命日などには彼女の家にお参りに行っていたはずなので目を閉じてその様子を思い出してみた。その家にはピカピカに磨かれたアップライトピアノがあった。そして、木目が美しいビクターのスピーカーとブラックボディのSONYのプリメインアンプがあったのを思い出した。とびきり高価であるというわけではないが、相当な音楽好きでなければ選ばない組み合わせのように思えた。亡くなられたお父さんは音楽が大好きだったに違いない。ついでに言えば、その家のお内仏(お仏壇)にいい香りのコーヒーがお供えしてあったこともあったので、音楽とコーヒーを愛する方だったのだろう。 そのお父さんが亡くなられた時、中学生ぐらいだった彼女は調律師になってこの寺の本堂にお参り以外では初めてやってきたのだ。 初めてA(ラ)の音を440HZではなくて442HZのクラシックチューニングにしてもらった。最近の調律は高性能の業務用チューナーなんかを使ってやるのかと勝手に思っていたが、442HZの音叉(おんさ)でAの音を決めるとあとは耳だけでチューニングハンマーを使って優れた相対音感で調律をすすめていったようだ。(作業途中、用事で中座した) そのチューニングハンマーを使う動作は 「腕相撲」 に似ていて、なかなか大変だなぁと思った。 長い髪をかき上げて音を確かめるその姿に 「そのロングヘア、似合っているけど作業には邪魔になりませんか?」 と訊くと、彼女は 「亡くなった父が、私にはロングヘアが似合うと言ってくれたんです」 と微笑みながら言った。 マーヒー加藤
by kaneniwa
| 2010-05-15 00:57
| 草音
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