2011年 08月 01日
とれたてのトウモロコシのが手に入る季節はこれに夢中。これの大ファン。これの虜(とりこ)。「これ」というのはつまりトウモロコシを皮がついたまんま炭火で焼いたものである。表面の、特にいちばん外側の皮が炭火で真っ黒になり、しかしながら皮を剥げば黄色い本体にはコゲひとつない状態が最高だ。皮をとっていく時に気持ちのいい蒸気が上機嫌に上昇すると、これまたいい。意図的な味付けや細工はまったくしていない。まず、いわゆる食感というヤツがシャキシャキのパリパリのスナック感覚であり、ここら辺が茹で上げたものとはかなり違う。 しかしながら、そのスナック感覚のトウモロコシをモシャモシャと咀嚼(そしゃく)していると、一粒一粒からじわっとーした甘みをともなった旨味がしみ出てくる。こんな旨味を皮のなかに隠していたトウモロコシであるが、その旨味は皮つきのまま炭火で焼くという方法以外ではなかなか引き出しにくいということも感じる。これは実際にやってもらう他ない。トウモロコシというものがマーケットでの売り場のカテゴリーでは野菜に分類されることも多いなかで「君は野菜でありつつも、やっぱり穀物であったのだな」と認識させてくれる。一粒一粒が立っているようなかまど炊きの新米にも通底する美味さだ。 皮つきのまま、炭火でどれぐらいの時間焼けばいいのか?という質問は難しい。どんな炭か、どれぐらいの火力の状態の時か、どんな器具(七輪か焚き火台かバーベキュー台)なのか、トウモロコシの大きさや皮の状況は一律ではない。ただ、何にも目安がないのも困るの思うので言うと、この時には焚き火台が炭火の熾(お)き火気味の時に焚き火台の端っこに置いて約30分というところだったと思う。急がず慌てず、赤子泣いても皮剥かず、七輪でもあまり強火ではない時にじんわり25分以上かけた方がいい。焼き物であるのに、何となくそれも米を炊くのに似ている。ちなみにこの料理(というにはレシピ以前の超シンプル系に属する)は誰に教えてもらったかというと、尊敬する友人のWさんという、身長190センチのハリーポッター顔の立派なバーベキュー伯爵からさずかったのであるが、そのWさんはこれをどこで誰から教わったかというと、北海道勤務時代に知り合ったアイヌ文化の継承者の方から教えていただいたという。ざん切り頭を叩いてみれば文明開化の音がすると明治の人は言ったそうだが、炭火焼きの皮付きトウモロコシを食べてみれば、シャキッシャキッという文明開化以前の音がするのであるが、それもまたいいのである。 マーヒー加藤 コッヘルバックナンバー
by kaneniwa
| 2011-08-01 01:29
| 草外道
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