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2013年 02月 05日

失われた時を求めるラーメン (3) 京都北山元町ラーメン(実践編)

b0061413_23235024.jpg 本来なら7回目の「失われた時を求めるラーメン、最終回」として投稿すべきブログ記事なのかもしれないが、これも巡りあわせである。前回の記事である 北山新町にあったラーメン小屋 というブログ記事を書きながら、そのお店というか屋台というか、私の表現では「小屋」なのであるが、場所を変えて地下鉄の四条烏丸駅を最寄りとする京都市の中心部に移転しつつ麺麺と、いや、連綿として営業を続けておられるということを知った。そしてそのブログ記事を投稿した直後に出張で京都に行くということになった。寄らずにおれるか。いや、何者かが「そこに行け」と囁きかけているような気にさえなったのである。京都の四条烏丸駅(地下鉄)を降り、大丸(デパート)とJEUGIA(基本的には楽器店なのだが、この場所にあるのはCDと雑貨を扱う店舗) の間の路地を入り百歩ほど進んでファミリーマートのところを左の路地に五十歩ほど進んで右側に「京都北山元町ラーメン」は実在し、営業中であった。この京都市の中心部で「北山元町」という地名を名乗っておられるだけでもう間違いないという気がしたが、混雑している一階席を避けて二階に上がらしてもらう。若い女性店員が対応してくれて「ここは昔、北山新町にあったラーメン屋さんですか?」と尋ねると微笑みながら「そうですよ」と言った。すかさずラーメンの並を頼むと「ニンニクは入れますか?」と尋ねてきた。間違いない。私はこの後にすぐ会議があるとは思いつつ「もちろん入れてください!」と言っていた。失われた時を求めるラーメンだもの、その時と同じトッピングでなくては。

b0061413_2324149.jpg ラーメン小屋は時を経て内装がモダンな二階建ての立派な店舗になっていた。二階部分には椅子席の他に写真のような座敷席もあった。あまりラーメン小屋の時代の郷愁の話をしてはいけないとは思った。ここは路地を入ったところとはいえ地下鉄の四条烏丸駅を最寄りとする京都の一等地であり、裸電球の照明のもと夕方から深夜までを営業時間としていた昔の小屋とは違うのだ。今は昼食の時間帯であり、このように清潔感あふれた明るい店内でなければならない必然性があった。だが、違和感を感じたのはBGMでありジャズが流れていた。(ただ、この部分、私の勘違いによるどんでん返しがありましたので、どうか最後までお読みいただければと思います)15年ほど前から創作和食系の居酒屋さんとか焼き鳥屋さんやお好み焼き屋さんなどではよくBGMでジャズを流すようになった。いちばん最初にやったのは東京の阿佐ヶ谷の「バードランド」という焼き鳥屋さんだと思っているが、それからどんどんとジャズが流れる小洒落た大衆食のお店というものが増えていった。他のところでは許せても「ああ、ここもなのか?」と、思ってしまった。しかもしっとりしたピアノトリオなどのジャズではなくてソニー・ロリンズ本人か、その影響下にあるミュージシャンのテナーサックスを主軸としたジャズであり「こういう曲をラーメンに合わせるのは無理があるなぁ」と思ってしまった。(だが、それは私の勘違いであった)

b0061413_23244242.jpg ラーメンが来るまでの間、そのジャズが流れる店内でいちばん気になっていることを聞いた。「昔、ラーメンを作っていらっしゃったご夫婦はご健在なのですか?」と。女性従業員は「ええ、元気です。でも2年ぐらい前にラーメンを作るのがしんどくなったと言って今は現場からは引退しています」と答えてくれた。20年ぶりにご夫婦と再会するということにはならなかったが、ラーメンとの再会がかなった。クラッシャーで潰した生のニンニクを口にすることはこの20年間まったくなかったので、その味が鮮烈すぎたのだが、ラーメンを口にした瞬間に失われた時は蘇ってきた。メニュー表に「当店のラーメンには鰻タレに使用されるたまり醤油を使用しています」という文字があった。なるほど鰻タレが焦げた香りの魅惑的吸引力には有無を言わさぬものがあるが、昔いつも食べていたラーメンの隠し味というかその魅力のベースには鰻ダレのベースになるものが関与していたわけか…これは衝動的に食べたくなっていたわけだなぁ。ラーメンを食べ始めた直後に、どんでん返しがあった。ジャズの曲が終わり「それでは今日はこれでお別れです、また来週お会いしましょう」というアナウンスが流れたのである。音がクリアーだったので有線であったと思うが、私がジャズのBGMであると勘違いをしていたものはKBSのラジオ放送であったのだ!失われた時がよみがえった!忘れていた記憶が呼び覚まされた。その昔、ラーメン小屋ではいつもトランジスタラジオから京都KBSのAM放送が流れていた。深夜に北山新町のラーメン小屋に行った時には「オールナイトニッポン」を耳にしていた。確かご夫婦は「とんねるず」のお笑いが嫌いで(関西の人には珍しくないことです)、深夜放送でのとんねるずのトークに「何でこんなことを平気で言えるんやろなぁー!」「ほんまやで!」というツッコミをご夫婦で入れていた風景が突然に、懐かしいラーメンを食べながら蘇ってきたのだ。立地も店舗もすっかりと変わったのに「店内にはラジオ放送が常に流れ続けている」という、一種の伝統のようなものが連綿とあり、そこにご夫婦が立っていらっしゃるかのように思えた。そしてさらに素晴らしいエンディングが用意されていた。最初から「このラーメン丼は昔からのものを使っているのではないか?」という予感はあったのだが、それが確信に変わったのはスープを一滴も残さずに飲みきった時だった。それを見るまではすっかりと忘れていたことであったが、ラーメン丼の底には鳳凰の絵柄が入っていたのだ。失われた時を求めるラーメン劇場の、まさに絵になる光景というか衝撃のラストであった。「こ、これはかなり昔からずっと使っておられる丼ですね」と言うと従業員は嬉しそうに頷いた。お勘定を済ませて店の外に出る。昼食時でありサラリーマンの姿も目立つが、路地には自転車やバイクが多く停まっていて、昔どおりに学生ファンが多いということも確認した。錦市場も近いので、次に来る時には 大安 で飲んでからここのラーメンだな。

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by kaneniwa | 2013-02-05 23:25 | 七草


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