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2013年 02月 11日

コッヘル200番 水

コッヘル200番 水_b0061413_133132.jpg コッヘル100番というキリ番のメニューは シャラポアのおにぎり であった。コッヘル626番(最終回、なんせこのナンバーはモーツアルトのケッヘルナンバーのパロディですから)のメニューにもちょっと考えていた今回の「水」という根本メニューを600回以上の掲載を予定しているこの長丁場の序盤の終わりあたりのところに「ドン!序盤に」(モーツアルトのドン・ジョバンニはケッヘル527番)ということで(なんちゅうダジャレだ…)置いておきたいと思った。 よく湧き水が飲めるようなところにあるアルミなどの素材の柄杓の先端も「コッヘル」と定義しつつ今回の200番目のかなりの根本メニューについて、2013年の時点での記述をしていきたいと思う。 さて、まず最初に語りたいエピソードはシャラポア(妻・日本人)の妊娠中のこと。シャラポア(シャラくせいので本ブログ記事では以下シャラと記述)は悪阻(つわり)がひどかった。私は事実として男であるので評論家的なことしか言えないが、悪阻とは胎児が最初にこの世の中と折り合いをつけていくための苦しみではないかとも思う。今年の4月から小学生となる末娘がシャラのお腹のなかに居た時には、現在住んでいる土地に居た。水道水でも都市部とは比べものにならないほどいいレベルであると思っていたので贅沢ではあると思ったが「せめて妊娠中だけでも他の食べ物を受けつけにくいのだから水ぐらいは好きなものを飲ませてやっか」ということになり、せっかくだから夫婦で「利き水コンテスト」というものをやることにした。用意したものはまず水道の水。それからフランス産とカナダ産、それから六甲、南アルプス、富士山を産地とする国産という5種類の市販のミネラルウォーター。さらに自宅から5キロ離れたポイントから汲んでこれる「どっこん水」といわれている地元の湧き水の合計7種類でやってもらった。「利き水」はそれらをコップに注ぎブラインドテストの方式でやった。するとシャラは市販の国産ミネラルウォーターなどについて「これはさっきの外国のものと違ってたぶん日本のおいしい水だと思うけれど、わずかにペットボトルの匂いがついている」などということを言った。「シャラ、お前はそんなに鋭い味覚を持っていたのか?」と思いつつ、言ったことはすべて当っていた。そして「これがダントツに美味しい水!」と指し示したコップに入っていたものは地元の「どっこん水」であった。まぐれかもしれないと念のためにもう一度ブラインドテストを繰り返したが同じ結果が出た。ガソリン代がちょっとかかっても無料で汲んでこれるポイントがあるのでいちばん安く済んだこともあり、嬉しい結果であっった。この「どっこん水」で悪阻から回復してから「カップ焼きそばが食べたい」と言われた時にはシャラの味覚は鋭いのかどうか???と思ったが、悪阻を克服していくきっかけに「地元の水」というものがあったことを嬉しく思う。6歳の末娘とドライブの途中に「ここの水を飲んでいくか?」と「どっこん水」の湧いているポイントに寄る。末娘は「美味しい!」と言う。無理もない。この世の中に出てくる前から好んでいた水なのだから。

ジョン・スタインベックの短編(題名を忘れた、検索しても出てこない!)で
主人公がホースから出てくる水を飲みつつ
「やっぱり生まれた土地の水がいちばんだ」
というセリフがあった作品があったと思う。
先月末、京都のモントレというホテルに泊まった。
このホテルは季節によって値段の変動がとても激しく、先月末は受験シーズン前で
一年でもっとも安く泊まれる時期で六角堂も近いいい場所にあるので久しぶりに泊まったが、
地下から汲み上げた水を部屋で自由に飲むことができる。
京都の水道水は全国的に中の下か下の上ぐらいで、真夏だと間違いなく下の部類
(でも大阪よりはちょっといいかな、とみんな言う)
だと思うが、地下水の方は間違いなく名水だ。
寺院や神社などで地下の水を飲むことができるところもある。
是非とも京都の天然水をお試しいただきたい。

15年ぐらい前のことだが、
横浜の中華街で地元の住職さんと中華料理で紹興酒を飲んだ後、
「ちょっと酔い覚ましにいいところに寄っていこう」
と言われ、いい喫茶店にでも連れていってくれるのかと思ってついていくと、
その場所は横浜スタジアムのある関内の横浜公園のなかの小さな森のなか。
横浜スタジアムのバッターボックスに入っていて
左中間(中華街方面)に160メートル弾ぐらいの特大場外ホームランを打ったとして、
そのボールがコロコロと転がって止まるあたりのポイントだ。
その小さな森のなかに湧き水が出るポイントがありカップが置いてあった。
「これが横浜の水だ」
と言って住職さんは美味しそうに飲み、私もご相伴にあずかる。
なるほど、徳川幕府が港を作るにあたって積荷に不可欠である水のいい場所を探し、
横浜に狙いを定めたというどっかで聞いた歴史は間違いではなかったと実感した。
その場所のすぐ近くを、横浜スタジアムでの観戦を終えた人々が塊となって通りすぎていく。
これを読まれた方は、スタジアムか中華街の帰り道にちょっと立ち寄ってみてください。

ロサンゼルスのダウンタウンに住んでいた時、
こんなパターンの夢をいくつかのバリエーションをもって何度か見たことがある。
指揮者がオーケストラと稽古をしている。
指揮者は私が世話になったことがある先生だったり住職さんだったりする。
指揮者は、ある時は英語で、またある時は日本語で(ここら辺が夢だなぁ)
繰り返しこういうことを言う。
「ダメだなぁ、お前らの出す音はドライすぎるんだ。
 お前らの演奏にはモイスチャー(水分、湿気)がないんだよ」
と言いながら繰り返し稽古をしている。
そして、何度もやり直しつつ、音が指揮者の満足がいく仕上がりになった時、
ニッコリ笑ったその指揮棒の鋭い先端から水なのか汗なのか、一滴の水滴がこぼれ落ちた。
そんな夢だった。
ロサンゼルスは砂漠性気候の土地に水をひっぱってきて
スプリンクラーを置き、無理やりに大都会にしたところがある。
同じカリフォルニアでもサンフランシスコやその近くのバークレーを訪れた時には
何ともいえない回帰感と回復感が体中に満ち溢れたが、その正体は、今思えば
毛穴から感じるモイスチャーだった。
そして米文学を学んだわけでも作品を真剣に読み込んだわけでもなく書くのはおこがましいが、
水辺の風景でかわされる会話や動植物の描写なども含めて
ジョン・スタインベック作品全体に通底する大きなキーワードは「水」であるという気がする。

もうすぐ2年になるが、東京電力福島第一発電所の大事故が起きた。
言うまでもなく、その事故そのものが甚大すぎる大惨事であったが
「水」というもっとも身近なものからセシウムをはじめとする放射性物質が
検出されることが報道されはじめた時に、
地元の水道からは検出されずに
その水道局には遊び人ながら人間性は誠実そのものの友人が居てくれるということはあったが
「明日からどうやって子どもたちを育んでいこうか?」
と正直思った。
汚染というものは複合汚染であり、その複合汚染の媒介となるものも水である。
だから、この懸念は今でも消えたわけではない。
ついでに書くことでもないと思うが(事実誤認であれば陳謝したいのでご報告ください)
「ただちに健康への害はない」
という言葉を当時の枝野官房長官が会見で繰り返していたその時、
官房長官の家族はハワイに避難していたらしいではないか。
「ただちに」の時はどれぐらいの期間であったのか、まだわからないが、
わからないがゆえにそれはジレンマとなる。

ハワイ、ワイキキ、カウワイなどハワイ諸島には「ワイ」のつく地名が多い。
ハワイは Hawaii と表記した方がわかりやすいが、
精神(Ha)の水(wai)を分け合う(i)土地であるという。
このことを教えてもらってから、なるべくハワイのことを「ハワイイ」と発音している。
そして、カウワイ島の水は美味しかったなぁと想い出す。

中国と仲が悪くなると、黄砂も大気汚染(特に微小粒子状物質のPM2・5)も
なおさら気にかかる。
ただ、原子力発電所の事故を抱える日本が中国に正当に文句を言うことは微妙に思える。
以前から疑問に思っていたが、東日本大震災が起こる以前には世界の環境団体の大きなところで
CO2を削減するために原子力発電を推奨するような発言が多く、しかも堂々と飛び交っていた。
まず、善人ぶるつもりはないけれども、多くの中国人が今、どんな水を飲んでいるのか心配である。
そして黄砂にのって日本にもやってくる大気汚染が日常的に摂取している水に
どのような影響を与えるのか、切実な問題として心配だ。

こうしてみると、生まれてから(文章の流れからすれば生まれる以前から)
「死に水をとってもらって」死ぬまで縁がある「水」であり、
やっぱりこれが登場するのはコッヘル626番の最終回だったのか?という思いもある。
整理がつかない文章ばかりを並べたが、今の時点で「水」について思うことを
ダラダラと書いてみた。

最後まで読んでいただいてありがとう。


マーヒー加藤

コッヘルバックナンバー

by kaneniwa | 2013-02-11 01:33 | 草外道


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