2013年 11月 03日
日本シリーズ第6戦の前に球場には入りきれずとも、球場の周辺に集まった大勢(2日は1万人、3日は隣接の陸上競技場も含めてそれ以上)の楽天ファンにちょっと似た気持ちであった。球場周辺へはさすがに照れくさくて駆けつけられないが、駆けつけても混雑を作り出すだけなので、せめて自宅よりは仙台に近い山形県の南陽市と米沢市に駆けつける。この10日間でいきなり一緒に野球をいっしょに観戦するようになった中学3年生の長女は、吹奏楽部の「3年生を送る会」というものがあって留守番をすることになったが、妻(日本人・おなじみシャラポア)と長男(小学6年生)と末娘(小学1年生)とともに「とにかく東北地方で楽天ゴールデンイーグルスの日本シリーズ制覇の瞬間を迎えよう」と、2日の朝ごはんを終えると車を山形県の南陽市にむけて走らせる。まずは南陽市のかなり山奥にある「荻の源蔵そば」という茅葺屋根の民家で明治時代からやっている蕎麦屋さんで新蕎麦を堪能する。ここは素晴らし過ぎたので、いずれまたブログで紹介する。幸先良し!そして赤湯温泉の日帰り温泉施設で世紀の一戦を観戦する前に沐浴し身を清める。これもよし!そして「長者屋敷」というヴィラ形式の部屋の軒下というかウッドデッキからも釣りができるという宿で日暮れまで鱒を釣りまくる。これもよし!2日の天気はまさに雲ひとつない鮮やかや青空の快晴、非常によし!日暮れとなって宿で鱒を塩焼きにしてもらいつつ、生ビールをグビグビ飲み、日本シリーズ第6戦の観戦に備える。非常によし!テレビ局も新潟圏内から山形圏内に入ったことにより、コマーシャルなども東北資本のものが増え、ニュースなども楽天びいき。この写真を撮る4回まで田中将大投手はいつもどおりで攻撃は巨人の菅野投手から2点を先制。冷蔵庫から地元山形のワンカップを取り出しつつ、部屋のテレビは家のよりも大きいHITACHIの50インチで、さすが長者屋敷!全て良しだった。5回表に入った時点まで…というわけで第6戦は珍しい田中将大投手の敗戦試合を見たということになる。 次の11月3日。前日のこれ以上ない秋の快晴から天気はウソみたいに暗転。それは、心もようを映すとともに嫌な予感。ただし、前日の午後から釣りというもののおもしろさに目覚めた末娘は釣りバカ娘となって朝から部屋の軒先でやっぱり鱒を釣りまくる。最後には40センチ級のジャンボニジマスを釣り上げる。釣果は宿で内蔵をとってもらい、さらに一匹づつ真空パックをしてもらい、さらに氷を入れたトロ箱に入れてもらう。近くの米沢市に寄ってさらにまた南陽市に戻ってさらに家への帰り道、南陽市のヤマザワという大きなスーパーマーケットに寄ると、入り口の自動ドアに「われわれは東北楽天ゴールデンイーグルスを応援しています」というタペストリーが飾られていた。自宅に戻ると留守番をしてくれていた長女が「今日はマー君は投げる?」と聞いてきた。私は、この日本シリーズ中に幾度もあった野球オンチならではの質問であると思った。前日に160球も投げたピッチャーが翌日も投げるということはないと思ったし、実際に「まず投げることはないだろう」と答えた。息子は「最後の1イニングだけ投げると思う」(実際にそれは的中したということになった)と言ったが、「いやいや、もしもあるとしても最後の打者ひとりだけだよ」と答えていた。第6戦で先発投手が160球を投げたことも、翌日の試合のベンチ入りも、そして登板も、本人の強い希望がなければ労働基準法違反となっても仕方がないことでありあり得ないことである。そしてシーズン24勝0敗という田中将大でなければいくら強く希望してもマウンドに立つことがあり得なかった。サッカーで激しい延長戦でも決着がつかずにPK戦となった時、ボロボロの状態の選手がPKを蹴る。素人目では疲弊しきっている選手が余力をふりしぼって蹴るよりも、余力が残っている選手を起用した方が良さそうな気がするのだが、実際にはそれまでの貢献度から「この選手が外したなら仕方がない」という人が蹴らねばならない。日本シリーズ第7戦、雨も激しくなってきて、スプリットがスリップして矢野に同点ホームランを叩き込まれる可能性もあったことも確かなことだ。ただ、解説者の古田敦也も工藤公康も驚き、うちの息子と野球オンチだったはずの長女の予想が当たって9回表の田中将大の登板となった。何はともあれ、日本シリーズ第7戦の最後の最後がこの結果となった時に、すべてがこのためのプロセスだったように思えてきた。来年、田中将大選手はアメリカンリーグであればニューヨーク・ヤンキース、ナショナル・リーグであればシカゴ・カブス、ロサンゼルス・ドジャース、サンフランシスコ・ジャイアンツなどで投げている可能性が(今のところ)強いということらしいのだが、どの球団でも契約社会で投手の分業制が高く、スポーツ医学が権威をもっているアメリカでは一試合で110球以上を投げることもなければ、先発した試合の翌日に投げるということもないはずだ。ただ、超一流でありながらも損得を度外視して勝負根性と負けず嫌いを優先した田中将大に、根性至上主義がはびこるのは御免ながら、やはり感じ入らないわけにはいかない。「その田中将大を心配しつつ、でもそこで輝いて欲しいという祈りに似た気持ちで見つめていた里田まいが、この一年間でもっとも成長した人ではないか」というのが、シャラポア(妻・日本人)の日本シリーズ総評であった。家族と観た2013年の日本シリーズは、球史に残るとともに、我が家の家族史にもずっと残っていくことであろう。 マーヒー加藤
by kaneniwa
| 2013-11-03 23:59
| 草評
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