2007年 04月 03日
宿河原といふ所にて、ぼろぼろおほく集まりて、九品の念佛を申しけるに、 外より入り來たるぼろぼろの、 「もし此の御中に、いろをし房と申すぼろやおはします」 と尋ねければ、其の中より、 「いろをしここに候ふ。かくのたまふは誰そ」 と答ふれば、 「しら梵字と申す者なり。おのれが師なにがしと申しし人、東國にて、 いろをしと申すぼろに殺されけりと承りしかば、その人にあひ奉りて、 恨み申さばやと思ひて、尋ね申すなり」 とふ。 いろをし、 「ゆゆしくも尋ねおはしたり。さる事侍りき。 ここにて對面し奉らば、道場をけがし侍るべし。 前の河原へ參りあはん。あなかしこ、わきざしたち、 いづかたをもみつぎ給ふな。あまたのわづらひにならば、 佛事の妨に侍るべし」 といひ定めて、二人河原へ出であひて、心行くばかりに貫ぬき合ひて、 共に死ににけり。 ぼろぼろといふもの、昔はなかりけるにや。 近き世に、ぼろんじ、梵字、漢字など云ひける者、其の始なりけるとかや。 世を捨てたるに似て、我執深く、佛道を願ふに似て、鬪諍をこととす。 放逸無慚の有樣なれども、死を輕くして、少しもなづまざる方のいさぎよく覺えて、 人の語りしままに書き付け侍るなり。 (吉田兼好法師 『徒然草』 第115段) 今でいう神奈川県の宿河原という場所(現川崎市内らしいよ)に、 僧侶でもなく在家でもない、身も心もボロボロになったしまった人々の その名もボロボロという集団が、浄土往生のための念仏を称えているときに、 外から入ってきたボロボロの一人が 「もしかしてこの中に、いろをし房というボロボロがいますでしょうか?」 と尋ねると、その中から 「いろをしはここにいますよ。そんなことを言う、あんたはどなたですか?」 と答える声がしたので、 「私はしら梵字と申します。名前は言えないですが私の師匠が、 東の国でいろをしという人に殺されたと聞いたので、 その人にお目にかかって、その恨みを晴らそうとお尋ねしました」 と答えた。 いろをしは、 「それはようこそ訪ねてきてくれましたなぁ。 そういえば、そんなこともあったような気がしますなぁ。 でも、ここで決闘したら道場が血だらけになるので、外の河原に出て立合いましょう。 いいかみんな、どちらの味方をしてもいけないよ。 みんなの迷惑になったらお念仏のさまたげになるからね。」 と約束をし、二人は河原で思う存分闘い、刺しあって二人とも死んでしまった。 ボロボロというのは、昔はいなかったのかな。 最近になって、ボロンジ・梵字・漢字などと呼ばれた者がその始まりだと言われている。 出家・隠遁生活をしているように見えて実はとても我執が強くて、ケンカや闘争を専門に やっている。実に勝手きままな無法者であるけれども、 死ぬことさえ何とも思っていないようなところがあって、 私のなかのどこかでそれを小気味よく思ってしまうようなところもあり、 ある人が私にしてくれた話をそのまま書いてみたのだ。 超訳BYマーヒー
by kaneniwa
| 2007-04-03 23:19
| 徒然草
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