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2008年 03月 18日

名曲草鑑賞 (3) ロバート・ジョンソンのThey're Red Hot

b0061413_23221146.jpg 音楽鑑賞のためのレビューのようなものを書こうと思って、年末と年始にベートーベンの「第九」と「バイオリンソナタ第5番」についてそれぞれ書いてみたのだが、クラシック音楽だけのコラムにしていくつもりはまったくないというか、むしろクラシック音楽について書く方が例外的なつもりだったのだが、ついつい、日本の年末には「第九」が響き、その流れで2回目もベートーベンをとりあげたというわけだ。  

さて、3回目はロバート・ジョンソンだ。




ロバート・ジョンソンは言うまでもなくブルースの巨人だ。
ローリングストーンズやエリック・クラプトンがリスペクトしているので、
そのつながりでロバート・ジョンソンに魅了されたという人も多いと思う。

マーヒーの場合、ちょっと違うというか、ちょっと変わっている。
映画館で観た 『ブルース・ブラザーズ』 の、
「スィート・ホーム・シカゴ」
という楽曲にノックアウトされたのだ。

この 『ブルースブラザーズ』 のDVDを買ったら、特典映像で
製作秘話のようなお話があったのであるが、
ロバート・ジョンソンの曲の著作権を誰が保有しているのかを探し回ったら、
なぜかロサンゼルスの美術館がその権利をもっていて映画での許諾を得たという。

それはともかく、ロバート・ジョンソンの2枚組のコンプリートアルバムという
ものを持っているのだが、最初から、何だか1曲、異質な曲が入っているなぁと
思っていた。ずいぶん長い間、「1曲、異質なものがあるなぁ」 と漠然と感じて
きたわけだ。

それが 「They're Red Hot」 (「赤く熟したトマト」) だ。

その曲に、ブルースのテイストがまったくないのか?と尋ねられると迷うが、
やはりこの曲に限ってはブルースというよりはカントリーフォークなのだ。
だいたい、ロバートジョンソンの曲はマーヒーが生まれる25年ほど前に
録音されているのだが、この曲に、知るはずもない「なつかしさ」を覚える。

聞くたびに頭のなかにセピア色のアニメが流れ、自分のご先祖様が
アメリカ南部の黒人に姿を変えて登場してくるのだ。

マーヒーが買った2枚組CDは、輸入盤(アメリカ)なのだが、
輸入盤としてはけっこう分厚いライナーノートがついてきていて、
そこにはロバート・ジョンソンの生い立ちからローリングストーンズや
エリック・クラプトンに与えた影響まで書いてあるのだが、
英語だし、CDに内包されてものすごく小さい字なので、つい最近まで
目を通さなかった。

「They're Red Hot」 を(ネットを含めて)調べていくと、この曲の異質さの
正体が少しわかってきた。

アメリカ南部のドラッグストアの販売促進のための
店頭ショウーのような歌われ方をして、そのための曲なのだ。
(日本の薬屋さんもスーパーマーケット的になってきたので実感できる)

つまり、ロバート・ジョンソン作のCMソングというわけだ。

♪ 赤くて熟したトマトだよ!
   あの娘が売ってるよ 
   おれの彼女は背高のっぽ
   台所で眠りゃ足は玄関
   ふたつで5セント(nickel)、4つで10セント(dime)

この曲の曲調がロバート・ジョンソンの曲のなかで異質なだけに、
むしろ、ロバート・ジョンソンという人の「個性」というものをより感じる。

歌詞のなかの、どことなくあるワルっぽさもそうだし、
ふたつで5セントなら、4つで10セントなんていうのは当たり前すぎて
CMとしては当ったのかどうかわからないが、
「スイート・ホーム・シカゴ」 のなかにも
  2たす2は4 4たす2は6
という、単純な足し算が歌い込まれているが、
マーヒーはこの
  2たす2は4 4たす2は6
に、ものすごく感動した。

まあ、偉大なる勘違いかもしれないが、
「スイート・ホーム・シカゴ」 を初めて聞いたのが
『ブルースブラザーズ』 という物語のなかであり、
ブルースブラザーズが徐々にバンドメンバーを増やしながら
その歌にたどり着いた旅の過程のようなものを想って、
基本的にはコメディであるのに胸を熱くさせてくれたのだと思う。

というわけで、このマーヒーも草野球チームの創成期は、
メンバーが増えていくたびに 「スィート・ホーム・シカゴ」を
思わずゴキゲンになって口ずさんだものだ。
作ったチームは (なんちゃって)ヤンキースだったのだが・・・

とにかく、単純な数字に人を連想するだけで胸が熱くなることがある。
同じように、この「They're Red Hot」 のなかにも出てくる
単純な足し算に、思いこみ過ぎなのかもしれないが、
当時のアメリカ南部の生活者を想起させられる。

さて、サウンド的なことにも言及しておきたい。
ロバート・ジョンソンの写真(2枚しかないと言われている)を見ると、
ギターのコードで言えば5フレット目のA7を押えているように見える。
これは自信をもっては言えない。
なんせ、ロバート・ジョンソンは変則チューニングの名人なのだから。
しかし、A7というと、なぜか納得するような気持ちにもなる。
E7♯9というコードを聞くとジミ・ヘンドリックスを連想する音になるように、
A7というコードは、ロバートジョンソンもっている重要な要素を代表する
音なのかもしれない。

「They're Red Hot」 は、ロバート・ジョンソンの他の曲と違って、
何だか一見、弾けそうな気がする。
コードも難しいものはないようだし、カントリー調の2ビートのリズムさえ
キープしていれば何とかなりそうな気がする。

でも、何だか、こういう音楽でいちばん大事な 「味」 の点で、決定的に
何かが違う気がしていた。

1月に、録画していた『タモリ倶楽部』の、
みうらじゅん(漫画家)と、安斎肇(イラストレーターで空耳アワーに出てくる人)
のユニットである 「勝手に観光協会」 を見ていて、
みうらじゅんが弾くギターは旅行用の小さなナイロン弦
(ロバート・ジョンソンはスティール弦)
のギターであったのだが、そのギターがかもしだしている
ある「味」があるのに気がついた。

ロバート・ジョンソンのギターは ギブソンL-1、小ぶりなギターである。
小ぶりなギターを使えばロバート・ジョンソンのテクニックがものにできるとか、
あの味を出せるというような大それたことは言うつもりはない。

ただ、小ぶりなギターを片手に旅を重ね、
アメリカ各地のジューク・ジョイントや時にはドラッグストアで演奏を
重ねたロバート・ジョンソンのサウンドの秘密のひとつに、
L-1のような小さなギターでなければ弾けない曲や、出せない味というのは、
実は意外な盲点になっているのではないだろうか。

マーヒー加藤


 
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by kaneniwa | 2008-03-18 00:14 | 草音


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