2008年 04月 24日
「旅行は墓場と市場を見るのがいい」 と誰かが言った。 墓場(過去)を見て、市場(現在)を見れば、漠然とながら未来が見える気がする。 東京の兜町なんて場所もちょっと特別な市場(マーケット)だが、昨年の夏、築地を訪れたのもなかなか良かった。 というわけで、朝は金戒光明寺などでたっぷりと墓場を見たので、バランスをとるために錦市場を娘と訪れた。 ついでに、錦市場のなかのカウンターの串カツ屋さんで夕食をとろうと思っていたが、ふと、アップルハウスの項目で書いたとおり、娘は柑橘類が大好きで、おまけに貝類が大好物だったことに気がついて 大安(だいやす) に向かう。 京都で大安(だいやす)といえば、千枚漬け(漬け物)の大安が全国的に有名だと思うが、マーヒーにとっては錦市場の貝を中心とした魚介の大安だ。 何気なく見えて、錦市場は伝統のあるお店が多い。古ければいいというものではないが、市場のなかに何気なくある酒屋さんが創業200年で今の店主が八代目だったという話を聞いてビックリしたことがある。 この魚介の大安さんも、創業から75年だ。マーヒーの学生時代は、昼間酒を楽しむオヤジたちが立ち飲みでたむろす比較的ディープな場所だったのだが、店を覗くと、立ち飲みではなくて狭いながらもカウンター席があり、若者たちが盛り上がっている。マーヒーは店の人に「このカウンター席はいつできたのですか?」と尋ねると、「つい最近ですよ」 と店の人が忙しそうに答えた。 「最近」 っていつ頃なのか知らないが、座る場所があるというのはこの上ないラッキー! しかも、土曜日以外は夕方6時頃にラスト・オーダーの店に5時20分頃に行ったせいもあって、並ばずに入れる。もう、これは入るしかない!と思って娘とカウンターに座った。 一個180円の焼きガキを四つ注文し(あまりの旨さにさらに四つ追加した)、それが炭火で焼き上がるまでの間、黒板に書かれた「本日のお造り」のなかから平目をいただく。何気なく注文したものだったが、娘と一切れづつ食べた後に、その旨さにビックリした。海産物に恵まれているところに住んでいる者として、誇りをもって言いたいが、「日本海の平目は美味しい!」 ただ、おそらくこれは瀬戸内海の平目だと思うが、どっちが優れているとかいう問題ではなく、その質感の違いに感動さえした。日本海とは別な海に久しぶりに出会った感動だ。 そして、これはサイドメニューというか、貝の専門店とはいえ、「魚介である限りはヘンなモンは出せまへん」 という大安さんのプライドを感じることができた刺身だった。 ついでに言えば、前にここに来たのは20年前だったと思うが、この20年間の間の輸送技術と保存技術の向上も感じた。勘違いかもしれないが。 焼きガキの到着。娘は貝が大好物で、そのなかでも牡蠣(カキ)が好きで、そして特に、こうやってレモンなどの柑橘類を搾ってかけて食べるのが大好きだ。桜満開のどこも満員の京都で、夕食はどこにしようかな?と考えてあぐねていた。予約が必要なお店は、子どものその時の体調や気分で食べたいものが大きく左右されてしまうのでなかなか決心がつかないままに旅立って、結局行き当たりバッタリだったのだが、そのバッタリで、結果的には娘を 「うわぁー最高!」 ともっとも喜ばせる地点に到達した。 こうして写真を整理していて気がつくのだが、器もなかなかだ。もちろん高価なものであるはずはないが、器にも気をつかっているという感じはする。 錦市場のアーケードの中で、向かいのお店は漬け物の西利さんだ。さすがに漬け物の方の大安さんが西利さんの場所にもしもあったらややこしすぎていけない。考えてみれば、アーケードのなかの半オープンカフェという、ここはものすごく不思議な空間だ。立ち飲み時代も不思議な空間だと思ったが、カウンター席に腰を下ろして道行くひとたちを眺めていて、ますます不思議空間だと思った。ちなみに、写真の左側の銀色のクーラーボックスにしてある貼り紙には「オイスターよ永遠に」という言葉が書かれている。一万年後ぐらいに、この京都の錦市場の「大安」が、貝塚として発見されたらオモローぉ・・・何ておバカな小夢想をしてしまった。 夢中になって焼きガキを食べる娘。さらに焼きサザエも二つ注文する。巨大なサザエが到着した。 マーヒーは焼きガキが一個180円ということ以外の値段の詳細は忘れてしまったが、生ビールを二杯飲んで、(最初は子ども連れだしまだ夕方だし飲まない気持ちも少しあったのだが・・・ムリムリ!) このあたりから 「安いなぁ」 という言葉を連発しだした。 「安いなぁ」 という言葉は、時と場合によってはたいへんに失礼な言葉になることもある。 マーヒーが「安いなぁ」というたびに娘は「パパってそんなにお金持ちだったの?」とでも言いたげな表情でマーヒーをのぞき込んだが、店の名前に 「安」 の文字が入っているお店では 「安いなぁ」 という言葉は賛辞になるであろうというのがマーヒーの流儀であり読みである。 ましてここは 「大安」 なのだ。 思った通り、マーヒーが 「安っすいなぁ」 と言うたびに店の人たちは大きな声で 「おおきにぃ!」 と言った。 「大安」さんでのお勘定は、3100円か3200円だった。(ちょっとうろ覚え) 娘の方はもちろんビールは飲まないいとしても、生ビールが2杯に焼きガキが8個、巨大サザエ2個、平目のお造りを堪能した。 大衆居酒屋チェーン店で軽く食事をするにしても、二人なら最低これぐらいはかかってしまうだろう。 お勘定を払う時、マジックで表面を丁寧に塗って作った 「なんちゃってブラックカード」 を冗談で出してみようと思ったが、だいたい 「なんちゃってブラックカード」 を手間暇かけて作ってくるのを忘れたし、ここでカードは使えない。 東山YHでもアップルハウスでもそう思ったが、今の時代の「カードが使えない場所」っていうのは魅力的なところが多いと思った。 千円札を四枚出してお釣りをたっぷりと受け取り、「ホンマに安っすいなぁ!ごっそうさん!」 と本心から言うと、店の人は声をそろえて 「おおきにぃ!」 と応えた。 マーヒー加藤
by kaneniwa
| 2008-04-24 00:11
| 草京都
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